零れ落ちてゆくもの


ガバッと起き上がり、必死に酸素を取り入れた。
呼吸が落ち着いてきた頃に
ようやく、周りを見渡す余裕が出来る。
窓の外は薄ら明るくなり始めていて
もう明け方なのだと、嫌でも分かる状況になった。

起き上がり、ソファーの上で膝を抱える。
枕にしていた自分のコートも、毛布にしていたロイのコートも
目の前の床に落ちて、ぐしゃぐしゃになっていた。
けれど、どうにも拾う気になれない。
ただぼーっと落ちている2つのコートを見つめ
自分みたいだと小さく笑った。

きっと鏡を見ると、コートと同じように
ぐしゃぐしゃの顔をしている。

カチカチという時計の秒針の音を聞きながら
エドワードはしばらくの間、ぼーっと窓を見つめていた。
外が明るくなり、もう朝だと分かる時間になった時
そっと、床に落ちていたコートを拾う。
自分のコートではなく、ロイのコートを…そっと。

「夢でさえ……」

現実は、女性と一緒にいる。
夢は、すり抜けて消えてしまう。

どうすれば一緒にいられるのだろう
どうすれば……

ぐしゃぐしゃに皺のよったコートに
顔を押し付けて、声を殺して泣いた。
きっと、ロイは女性の元から司令部に向かうだろう。


戻ってはこない。


あぁ…いつから俺は
こんなに女々しくて、泣き虫になったのだろうか
いつだって、涙を堪えて歯を食いしばっていたのに
何故、こんなにも簡単に目から零れてくるんだろう

ロイのコートに、エドワードの涙が少しずつ滲みこんでいく

いつか、いつか……俺は、ロイが誰かと付き合うのを
この目で見なければならないのだろうか

いつか、いつか……俺は、ロイが誰かと結婚するのを
この目で見つめなければならないのだろうか


「嫌だ……」


小さく呟いた言葉は、コートに顔を埋めていた事で
篭った声になった。
誰かに聞いて欲しいわけではなかったので
エドワードは気にせずに、もう一度呟いて


「嫌だよ……」


泣いた。