集中した結果の帰宅


睡眠は大事だよな、でもそれすらできなくなった奴がいるんだ。
俺の所為だって何度も何度も心で思ってしまう

誰の所為でもないよと奴は俺に言う

そして、お前の所為だな…と声を出す奴もいる。
だからこそ歩むのだろうとそいつは……。
いつでも俺に光という名の道をくれたんだ。



「アンタ、いつか刺されるよ」
後ろからとか、前からとか……。
青い軍服を広げて、着なきゃいけないのかと溜息を吐きながら
ロイに対し、さらりと言葉を放つ。
女絡みも酷い事ながら、その地位もこの性格も大問題だ。
その言葉を聞いたロイは、笑みを浮かべたまま
エドワードに何を言う訳でもなく、自分の椅子に戻った。
「パーティーは、明日だ……絶妙なタイミングで帰ってきたな
 終わるまで移動は許さんぞ」
「本当……最悪なタイミングだ、期待すんなよ大佐の隣で笑わないぜ?」
互いに睨み合った笑みを浮かべているのを見て
ホークアイが小さく溜息を吐いた。
その溜息を聞いたロイは、幸せが逃げると言葉にしたが
貴方の所為です、とハッキリ言ってホークアイは去った。
閉められた扉の音を聞き、エドワードは声を出して笑う。
その笑い声に、ロイは眉間に皺を寄せた。
その皺を見てエドワードは更に笑った。

数分の出来事だったのだが
笑い続けていたのが気に入らなかったのか
ロイは、机の引き出しから1つの本を取り出し
エドワードに向かって投げた。
もちろん、当たる事無く受け取ると分かっていて“投げた”のだが
投げられた方はいい気はしない。
「ったく、何すんだよ……」
左腕に受け取った軍服をかけていたので、右手で本を受け取った。
機械鎧だからよかったが、生身だったらそれなりに
痛いだろうと思い、エドワードから笑い声が止まる。
「キミが欲しがっていた文献だ、感謝したまえ」
笑い続けていたのを止めれた事に、ニンマリしたロイは
エドワードの表情を見て、クスクス笑った。
欲しがっていた文献と言った瞬間、嫌そうな表情が一転
目が輝いて嬉しそうな表情に変わったのだ。

「サンキュー!!」

お礼の言葉を口にして、持っていた軍服を近くのソファーにかけ
受け取った文献を立ったまま読み出す。
そんなに急がなくとも、文献は逃げないのに
ソファーに座る時間すら勿体無いと言い出しそうな雰囲気だ。
これだからキミは……そう呟いたロイの言葉は
集中したエドワードには届いていない。
座って読みなさいと声をかけたトコロで、声は届かないので
声をかけるのを諦めて、ロイは書類の処理をし始めた。



書類の処理が終わる頃には、立ったまま読んでいたエドワードが
ソファーで丸まって寝ていた。
どうやら集中していたのはエドワードだけではなく
ロイもだったようで、途中遠くから声が聞こえたが無視をしていたので
この現状なのだろうとロイ自身驚いていた。
いつもこれぐらい仕事をしてくれたらと
ホークアイなら言いそうだが、その言いそうな本人は
今、この部屋にはいない。
仕方ないなと独り言を呟いたロイは、帰り支度を始め
黒いコートを羽織ってから、エドワードの傍に寄る。
「起きなさい……」
声をかけるが、小さく丸まったエドワードからの反応はない。
どうやら珍しく熟睡をしているようだ。
弟が寝れない体なのだからと、普段から寝不足で
旅の休息時間は、調べモノに費やすような子供だ。
熟睡するまでは爪で引っ掻いてくる猫のようだが、熟睡してしまえば
ちょっとやそっとの振動では起きない、可愛い仔猫だ。
ソファーにかけてあった小さな青い軍服を右腕にかけたロイは
その軍服の持ち主の肩をそっと下から掬い上げた。
「私も寝不足だという事を……君は忘れているね」
苦笑しながらエドワードを軽々と抱き上げて
ロイは音を立てずにそっと部屋を出た。