優れているらしい


どうやらアイツは優れているらしい。
それを自分で認めてしまうあたりがアイツらしいけど

それを聞いて、納得できない俺は何だ。

とりあえず、地位が上でも人間性がな……。
まぁ、人の事は言えないんだけど。



2時間という長いようで短い時間が経ち
床で寝ていたロイが、急にむくっと起き上がった。
「…おいおい、もういいのかよ」
寝不足で、人の耳からピアスを引き千切ろうとした人間が
たった、2時間の睡眠でいいのだろうかと疑問に思う。
そんなエドワードの頭をポンポンと叩き
「ありがとう…」
ロイは小さく笑いながら一言口にした。
「げっ……大佐、何か悪いもんでも食った?」
普段なら、ありがとうなんて言葉は出てくるはずがなくて
しかも、いつもからかってくるあの大佐からの言葉だ。
何か悪いモノでも食べて、気がおかしくなってしまったのではないか
そうエドワードが思うのも不思議ではないぐらい
珍しい一言だった。
寝起きだからなのか、寝不足は続行中なのか……。
そんなロイは、ゆっくりと椅子に座り、エドワードを見つめる。
「さて、大総統からの命が来ているのだが……」
ペラペラと書類をエドワードに見せ、ロイはまだ微笑んだまま。
気持ち悪いから、その微笑みをやめろと言っても
素直にエドワードの言う事を聞く様子はみられない。
「弟君はどうしたね…」
「師匠のトコ…しばらく別行動だよ」
それは好都合……放たれた言葉に
エドワードはロイをギロッと睨む。
何が好都合だ馬鹿野郎とエドワードが心の中で叫ぶと同時に
ロイは、書類をエドワードに投げ渡した。
「国家錬金術師のみ集合のパーティーだそうだ」

当たり前のような強制参加。
どうやら、参加しないモノは大総統に
直接断りを入れなければならないらしい
もちろん、そんな勇気のあるモノはいないだろう。
遠くの地域に派遣されていて、どう頑張っても
パーティーに間に合わない場合のみ、許されるというぐらいなモノか
「……最悪なタイミングだな」
ボソリと呟くエドワードを、ロイは嫌味な笑みを浮かべ見つめていた。
「最高のタイミングだと言いたまえ」
ロイ自身も、こんなパーティーは
面倒臭いというタイプのはずなのに、何故か笑みを浮かべたまま。
どういう事なのかと、エドワードが思っていると
「私は、生憎寝不足気味だ…そこに君が来た、鋼の」

最高のタイミングだとは思わないかね

書類をさっとエドワードに渡し、ロイは小さな欠伸をする。
なんて奴だ。
「大佐もパーティーには出るが、俺が隣で大佐の変わりに笑ってろってか?」
「頭のイイ子供は好きだよ」
「死ね」
渡された書類を見ながら、エドワードは一言放つ。
でも、ロイに対してどんな言葉を放とうとも
意味がないだろう。

「あんたさ、そんなに女性に縁がないわけ?」
しばらくして、エドワードがロイに話す。
書類は、2人の間にある机の上に投げられていた。
「急になんだね……」
自分は寝不足だという姿が全開なロイは、椅子に座った状態で
窓の外を見つめていた。
エドワードの突然の言葉に、少し肩を揺らしたが
振り向く事はない。
「だって、少尉がまた女絡みだって言ってたし」
毎度毎度、女絡みでこうやって命を狙われるモノなのか
男というモノは、こうも面倒臭い生き物なのだろうか
それとも、付き合う女が面倒臭い事を引き込むのだろうか
何にしても、ロイ・マスタングとは面倒臭い生き物だと
エドワードは小さな溜息を吐いた。
「司令部まで入れたのは私だ、女性絡みではないよ」
話を聞けば、出勤時にたまたま見つけた男が
耳にあのピアスを付けていたと……。
「でもさ、大佐さえ居なければとか、嫉妬は醜いとかさ」
ぼそぼそ呟くエドワードを見て、ロイは席を立ち上がり
ゆっくりと近づき始め、エドワードの頭を撫でた。
それと同時に、扉のノック音がしてホークアイの声が聞こえる。
どうやら、エドワードのパーティー用の軍服が準備できたとか……
「自分達の政治目的を実現させようとするには
 どうやら私のような地位の人間は邪魔のようでね」
扉が開き、ホークアイが青い軍服を持ってきた。
それをロイは受け取り、エドワードの手の中へと渡す。
「嫉妬とは、優れた者に対してのねたみの意味もあると」

覚えておきたまえ