馬鹿は床で寝る
ピアスって痛そうに見える。 だって、耳に穴をあけるんだぜ? そんな事を思ってしまう俺は、子供だからか でもちょっとだけ興味を持った。 アイツの瞳と同じ、漆黒のピアスなら… つけてもいいかな……なんて。 傷が出来て、頬に赤い滴が流れている。 普段なら、何をするとか加減ができないお子様だとか エドワードをからかう言葉が出てくるのに ロイは何も言葉を言わずに、頬に出来た傷を手で触り 手についた血をペロッと舐めた。 その様子を見て、エドワードはビクッと肩を揺らす。 普段のロイとはまったく違う。 一歩、後ずさりをした所で、ハボックとホークアイに捕まった。 「大丈夫よ、ただの寝不足だから」 どうやら、ロイはかなりの寝不足で 普段と違う行動をしているのは、ただ思考がしっかりと 働いてないからだとホークアイは言う。 「ったく、女絡みを持ち込まないでほしいよな」 ハボックは苦笑いしながら、エドワードの肩を ポンポンと叩き、ロイと倒れこんでいる男を見つめていた。 2人は軽い口調で言っているものの 瞳は、ロイに向けられ……心配だと語っている。 「女絡みを持ち込んだ…大佐の自業自得だろ」 ここで不安な言葉を出したら、2人の不安は広がるだろう。 だからエドワードは、自業自得だと小さく笑った。 どうやら、寝不足はかなりのモノらしい……。 この様子だと、1週間ぐらいだろうか おそらく、仮眠しかとっていないのだろう。 「最近は、テロが多くてね……私も部下もなかなか 寝れない日々が続いているのだよ……」 ロイは倒れこんでいる男に近づきながら すらすらと喋っていく。 「そのテロの中心になっている集団を、捕まえるのに とにかく必死になっていてだね……この前はヒューズに かなり怒られてしまったよ…事件を早く解決させて さっさと娘の元に帰せと……ところで…」 ロイは男の前でしゃがみこみ、男の耳に触れる。 男は目の前の無表情のロイに対してビクッと震え その場から動けずにいた。 「そのピアスはどこで購入したのかな…逆さ十字の…」 逆さ十字……その言葉を聞いた瞬間。 ホークアイとハボックがまた、銃を構えた。 心配そうな表情が突然変わる。 それに驚いたエドワードは、ただその場に立ち尽くし この場の様子をじっと見つめていた。 自分の機械鎧を練成した武器は、もう元に戻している。 「どういう事…?」 エドワードが小さい声でホークアイに問うと 銃を構えたまま、ホークアイは答えてくれた。 「今回、問題になっているテロの集団の共通点は… 逆さ十字のピアスを付けている事なの」 「女絡みじゃなかったって事っすか…」 ハボックの言葉に、ホークアイは静かに頷いた。 「素敵なピアスじゃないか……」 ロイはピアスに触れ、にこやかに笑っている。 ピアスに触れている手は、いつもの発火布をつけてはいない。 攻撃する気はないという事か……。 それとも、発火布を使うまでもないという事か…。 様子をじっと見ていると、ロイは男のピアスをぐっと掴んだ。 ロイは寝不足、思考はまともに働いていない。 そこで、ピアスをぐっと掴んだとなれば 次の行動は、決まっているようなモノだ。 「大佐ッ!」 ロイの手が動き、男の耳からピアスを引き千切る前に エドワードはその場を駆け出した。 数歩でロイの背中に手が届く……。 ドンッと背中を押して、ロイをその場から動かし ホークアイとハボックは、男を拘束した。 その様子を見て、ホッとしていたエドワードに ホークアイは、大佐をお願いと言い残しハボックと共に 男を連れて部屋を去っていった。 見れば、ロイは床にうずくまって小さな寝息を立てている。 仮眠も休息も部下を優先させての1週間。 果たしてロイはどれだけ寝れていないのか…… 「馬鹿だろ…」 一言呟きエドワードはロイの横に、腰を下ろした。 床に座るのはどうかと思ったが、床に寝てる奴よりマシだと思う。 しょうがないと思いながら、ロイが起きるのを 数時間、待つ事となった。 |