水たまり


ピシャ、ピシャンと足を進める度聞こえる音。
大雨だった天気は、小雨へと変わり…。
エドワードは仔猫を抱えたまま、水たまりへワザと足を入れて
音を立て、水を跳ねさせていた。
差さない傘を片手に、エドワードの後ろを付いて来るロイを
チラリチラリと見ながら、エドワードはゆっくりと足を進める。
しばらく歩き、司令部が近づいてきた頃。
「大佐……腹減った」
視線は前を向けたまま、エドワードが声に出した。

ただ一方的に怒って司令部を出て
雨に降られ、仔猫を助けるために川の中に飛び込む。
体力は使うばかりで、何か食べ物を腹に入れたわけでもない
司令部を飛び出してから、かなりの時間が経っていた。
お腹が空くのも当たり前の時刻でもある。
「鋼のが猫好きだとは知らなかった」
猫とは美味しいのかね?なんてクスクス笑いながら
ロイはエドワードに声をかけた。
「な、食べるわけねーだろッ」
エドワードはその場で止まり、振り返ってロイの言葉に反応した。
腕の中に居る仔猫は、ロイを睨みながら鳴き始める。
「ほらッ、怒っちゃっただろー!」
アイツは仔猫の敵だ、なんて話せるわけがないのに
仔猫に向かって言葉を放つ。

仔猫に向かって話をしながら、歩き続け。
ようやく司令部前と来たエドワードにロイは一言声をかけた。
「そんなに空いているのかね……」
「……まぁ、さすがに猫が美味しそうにみえるほどじゃないけど」
会話を続けながら、廊下を歩きホークアイが待つ部屋への扉を開く。
そこには、未決書類の山と追加の仕事の書類を持ったホークアイが立っていた。

「帰宅なさったのですから、ちゃんと仕事をお願いします」

ホークアイの背景に、黒いモノが見えそうで
扉のノブを持ったまま、ロイはその場に固まり
エドワードは顔を引き攣らせていた。

「鋼の……食事は後でも構わないかね……」
「だ、いじょうぶだから…仕事やれよ……」

小さな声でされる会話の間には
何が起きたのか分かっていない仔猫が
2人の顔を見ながら、鳴いた。