僅かでも確かな笑顔の違い


違う。
誰も気付いていなくても、俺は気付いてしまった。
あぁ、どうして気付いてしまったのだろう。
司令部のソファの上、エドワードは小さく唇を噛んだ。

本当に僅かだ、でも違いはあった。
あの雨の日から、既に数日が経っていた。
引くと思われていた風邪は、今のところ引いてはいない。
ホッとした所で、司令部に寄ってロイの顔を見て
そこで気付いてしまった。

「あぁ……」

何かを言葉にしようとするが、声は声のまま
言葉にはならず、ただ自分の口から声になって出てきたモノを
自分の耳で捉えるだけ。

その他大勢の中の俺は、逢いたいと願って
例え、偶然で逢えたとしても……。
それは、やはりその他大勢の中の1人には変わりなくて
今日、ここに来て気付かなければよかったのに
ほんの僅かな違い。

ロイが見せる笑顔、部下に見せる笑顔は信頼だ。
誰に何を言われても、揺らぐ事ない信頼がそうさせてる。
きっと、これはエドワードには向けられない。
向けられるのは鋼の錬金術師のみだ。
それはそれでよかった……言い方は違えど
鋼の錬金術師は、エドワード・エルリックに違いはない。

問題は、エドワードに向ける笑顔と女性に向ける笑顔だ。
女性に対しては、分かりやすい愛情だ。
それ以外何でもない、愛する人に向ける優しい笑顔。

「鋼の?」

ぼーっとしていた所為か、ロイがそっと覗き込んできた。
けれど、エドワードはロイから視線は外れたまま
頭の中で、違いについて考えていた。

エドワードに向ける笑顔が、一番の問題。
「今日は…来るかね?」
「え…あ、あぁ……」
この表情だ……親愛と困惑が入り雑じった顔。
折角の男前も、こんな笑顔では台無しだ。

誘うなら、もうちょっと女性相手みたくしっかり誘えよ。

口にはしないが心の中で思ってみる。
しかし、思いながら…頭はしっかりと働いてはいない。
気付いてしまった笑顔の違い。

信頼でも愛情でもない。
親愛と困惑の入り雑じった……。

愛情でないのが悔しくてたまらない。
親しい人に向ける、タダノ愛なんて
愛は愛でも大きな差。
更には、そこに困惑という文字が並ぶ。

何を困る?そう考えた時。
気付くのは感情だ。
親しくするのはいいけど、本気になるなという事か。

大人は…大勢の人に、愛してると囁けるから。
子供は、本気になるなと……

エドワードは、その場でゆっくり立ち上がった。
「先…行ってるよ」
向かうはロイの家。
来るかと問われ、返事をしてしまったのだから
行かぬわけにはいかないだろう。
トボトボと司令部を出る。



これは、貴方の違いを見つける事ができたと

喜ぶべきなのか

それとも、貴方の違いに気付いてしまったと

悲しむべきなのか