体温
水がポタポタとコートから落ちる。 傘は地面に投げ捨てられていて、雨は降り続いている。 腕の中で、ブルブルと震える仔猫が居る中 目の前は、黒いコートからチラリと見える青い軍服の大きな体。 「遅い……」 雨音にかき消されるほど、小さな声で呟いたエドワードは 司令部を出てきた理由が理由だけに、顔を上げる事ができずに居た。 「君が、降れ降れ坊主なんか作るからこうなるのだがね」 エドワードの様子を見て、ロイは苦笑しながらポンポンと肩を叩き 俯いたエドワードの前髪に、そっと触れた。 コートと同じく、髪の毛からも雫がポタリと落ち 降り続く雨と共に、地面に滲み込んだ。 「んだよ…俺の所為かよ、無能大佐」 「あぁ…君は、どうも考えなしで体が先に動くようだからな」 ロイの言葉に反応し、そしてその反応にまた言われ 睨むように顔を上げてロイをじっと見つめたエドワードは 顔を上げると同時に、腕をぐっと引っ張られ 気付いた時には、ロイの腕の中に居た。 「すまなかった……」 雨はまだ止まない中、2人でびしょ濡れになりながら 川のすぐ傍で立ち尽くす。 遅いと呟いたが、本当はロイが追いかけて来てくれた事が 嬉しくて…… 助けてくれた時に、傘を持っていたのが見えたけれど でも、持っていた癖に雨に濡れすぎているトコロを見て あぁ……必死に探してくれた事実が 嬉しくて…… 沢山ある道の中から、この道を見つけて 俺を見つけてくれた事が嬉しくて… 謝らなければいけないのは俺の方なのに先に謝って抱きしめてくれて どうしようもなく嬉しくて 「ゴメン……」 仔猫がエドワードの腕の中で、少し苦しそうにしていたが ほんの少しだけ、少しだけ我慢してもらって 片手で仔猫を支えながら、もう片方の手でロイのコートをぎゅっと掴んだ。 雨で濡れていて、体温なんて随分前に奪われて 寒さしか感じなかったのに 目の前の青い軍服に、少しだけ顔を埋めた時に感じたのは 寒さではなくて、温かさ。 「ゴメン…大佐……」 「鋼の……」 誰も見てないから…ちょっとだけ。 そう思いながら、その場でずっと雨に打たれ続けた。 その間、ロイはエドワードと一緒に雨に打たれ続け エドワードが『離せ』と言うまで、抱き締めたまま 体温を同じくしていた。 |