降れ降れ坊主
ワナワナと震えた両手は、ドンッと机を叩いていた。 机に響く鈍い音だけが、この部屋で唯一、音となっていて 叩いた本人のエドワードも、叩かれた机の向かいに座っているロイも 一言も言葉を放つ事はない。 しばらくして、静かな空気を変えたのはエドワードだった。 「もういいッ…」 そう一言残し、ロイに背を向けて部屋を去る。 バンッと音を立て扉を開けて、同じくバンッと音を立て 扉は閉められた。 その様子を、何もする事もなく見つめていたロイは 小さく溜息を吐き、椅子に座る。 机の上に溜まっている書類に手をかけて 1つ、1つ印を押していく途中で動いていた手は止まる。 視線を扉に向けると、ガチャリと開き入ってきたのはホークアイ 「大佐…手が止まっています」 「あ、あぁ……」 やはり、戻っては来ないか……。 そう思いながら、ロイはまた小さく溜息を吐き、書類に手を伸ばした。 「行かなくてよろしいので?」 書類の山が少しずつ片付いてきた頃、ホークアイが一言話す。 それに、ロイは無言で答えを返した。 何も喋らず、書類に印を押していくロイを見つめ ホークアイはまた、独り言のように喋りだす。 「エドワード君は、男性です……守られるだけの存在が嫌なのは」 男性なら年齢問わずですよ 「だが、子供だ…」 印を押す作業が止まる。 静かに低い声を出し、ロイはホークアイを見つめた。 「子供の前に、男性です」 ロイの言葉は、ホークアイに一刀両断される。 「午後は雨です……早く行ってあげて下さい」 いつもなら書類を差し出すホークアイが 珍しく、ロイから書類を取り上げた。 ロイは、ゆっくりと席を立ち窓の外を見る。 外の天気は曇り……既にポツポツと雨の音がする。 「あぁ……本当に降ってきたな……」 窓には照る照る坊主ではなく、照る照る坊主を逆さにした 降れ降れ坊主がかかっていた…。 そういえば、エドワードが笑いながら作り 窓に付けていたような気がする。 『これで、降ってきたら本当、無能になるよな』 なんて……笑いながら……。 「仕事は帰宅してからしよう…」 「はい、ですから早く行って下さい」 ホークアイの言葉を背に、ロイは少し大きな黒い傘を持ち 司令部を後にした。 |