幸せだろう
ぺたぺた触る。 目の前にロイが居る事を必死に確認した。 周りは真っ暗闇、岩の隙間からかろうじて外が見えるぐらい。 「ロイ、ロイ……」 触った先が、ロイの頬だと気付くのにも少し時間がかかった。 触っているのに、反応がない。 凄く嫌な予感がした。 「ロイ…ってば……」 ぺたぺた触っていたのをやめて、ぺしぺし叩く。 ロイは、エドワードをぎゅっと抱きしめたまま反応しない。 何度呼びかけても、何度叩いても触れても返ってくる声は聞こえない。 つーっと涙が頬に流れた。 その涙は、頬から地に落ちた時に嫌な音を鳴らす。 コロコロっと珠が転がる音がした。 慌てて下を見ると、周りはロイとエドワードの血で茶色く染まっていた。 それと同時に嫌なモノも見た。 「ロイ、どうしよう…ロイっ」 肩を撃たれているという事を忘れて エドワードはロイの肩を掴んで揺らす。 「…ッ……」 声にならない声が聞こえ、苦痛に歪めた表情が見えた。 それを見て慌てて手を離すが、エドワードも大問題を抱えていた。 血が乾ききって茶色く見えるその地面は 全面、宝石に変わっていた。 それは少し前にも見た光景なのだから、慌てる事もないと思っていた。 なのに今回は少し違ったのだ……。 「エド…?」 歪んだ表情が少しだけおさまり、ロイは目を開いた。 声をかけたエドワードの周りを見て愕然とする。 洞窟が崩れ、岩などが降ってきた。 もちろん背中や手足に当たって、痛みなどは麻痺状態である。 だから分からなかったのだろうか……。 いや、分からなかったのも仕方ないのかもしれない。 もう、半分以上が痛覚がない状態になっていたのだ。 エドワードの下半身のほとんどが、全て宝石化されている事も そして、鋼玉ではないはずのロイの下半身もまた ゆっくりと宝石化している事も…… 痛覚のない状態では、何も気付く事ができなかった。 「どうしよう、ロイが…」 ポロポロ涙を零し、涙が球体へと変わり地に落ちてコロコロと鳴る。 エドワードの涙をそっと手でぬぐいながら周りを見渡し 脱出の事も考えた。 しかし、まず宝石化した脚が動かない。 考えている間にも、ゆっくりと宝石化は進んでいく。 「すまない……どうも、無理みたいだ」 ロイは微笑んだ。 エドワードはその微笑みを見て怒り出す。 何を笑ってるんだと、自分の所為で死んでしまうかもしれないのに エドワードがいつも見ているロイは、諦めないのに……。 なのに、今回だけすんなりと“無理”だと言った。 鋼玉だからこんな事になってしまった。 俺だから、ロイを巻き込んだ……。 大好きなのに、大好きな人を巻き込んだ。 涙は止まることなく、エドワードは悔しくて悲しくて 顔を伏せたまま、ロイの胸をドンドンと叩いた。 叩いていた手はロイの手に捕まる。 「っ……」 「死ぬのは怖いかい?」 ロイの言葉に、ふっと顔を上げた。 怖いに決まってる、そう答えようとして止まる。 「キスしたまま宝石化して、そのまま逝けたら幸せだろうね」 続いたロイの言葉が、あまりにも唐突すぎて……。 「何、言って……ロイ、だって」 今にも死にそうな人の言葉ではない。 もう動けない体に迫ってくる石化。 とても助かるとも思えないのに……。 ロイは笑っていた。 「助からないなら、それなりの形で固まるのも悪くない」 キミとだからね、エドワード。 その言葉はとても小さく、聞くには困難だった。 それでも聞こえたのは、ロイの吐息がかかるほど顔が近く 言葉を放つロイの唇がそっと触れたからだと……。 |