腕は温かく


叫んですぐ洞窟の入り口から銃声が聞こえた。
ふっと顔を上げて、入り口付近を見る。
見張っていた町の人が2人ほど、血を流して倒れていた。
「誰だっ!」
町の人が騒ぎ出す。
あっという間に銃撃戦になり、銃声が響き渡った。

叫んだ本人であるエドワードは、一瞬驚いたが
チャンスだと思い、縄を解こうと洞窟の隅に寄る。
血が流れ出るのも構わず、近くの岩に擦り付けて縄を切った。

隙をみて、走り出す。
出口は1ヶ所、銃撃戦が行われてる間を
すり抜けなければならない。
流れ弾に当たってしまうかもしれない
もしかしたら撃たれて死んでしまうかもしれない
それでもエドワードは走った。

エドワードからしてみれば
ここで銃撃戦が起こる原因は、ハッキリしていて
アイツが助けに来てくれたんだと分かっていた。
このまま、自分が奥に居ることが
どれだけ不利な状況を生み出すかなんて
さすがに、そこまでは分かっていないのだが
ただ、アイツの傍に行きたいという願いだけで足を進めていた。


生きたい。

生きて、アイツの傍で笑って

くだらない話に盛り上がって

無茶して怒られて、頑張って褒められて

それで、それでアイツと一緒に呼吸して


もうすぐ入り口に近づくという所で、エドワードは
ぐっと腕を引かれた。
体がビクンッと反応し、慌てて振り払おうとする。
もうあと数歩で入り口。
エドワードからすれば、入り口ではなく出口だ。
出れると思った矢先に捕まるなど、冗談じゃないと
思いっきり叩こうとした。
「待ちなさい、私だ」
聞き覚えのある声に、慌てて振り向いたエドワードの瞳には
ぐっと手を掴んでいるロイの姿が映った。

「ロ…」
イと名前を言う前に、エドワードの声は銃声にてかき消された。
これでは逃げるのは無理かもしれない。
不安がエドワードの頭を過ぎる。
そっとロイの表情を窺い見る。
見られている事に気付かないのか、それとも気付いていて
あえてコチラを見ないのかは分からないが
洞窟の壁に身を隠しながら、町の人達の様子を伺っている。
今、声をかける事はやめよう。
そう思い、エドワードは視線をロイの顔から下に向けた。
「ロイ……何、コレ」
視線は、その場で止まる。

「俺の所為、ヤダ……」
エドワードの視線の先には、真っ赤に染まったロイの脚があった。
先程の銃撃戦で撃たれたのだろう、痛々しい脚。
「エドワード」
「ヤダ…このまま………嫌っ」
ロイが声をかけるが、エドワードはロイの脚を見てから
小さくパニックを起こしていた。
「エドワード、落ち着きなさい」
「嫌ッ…だって、血が」


同じ血じゃない。
エドワードの血は、この場では球体になってルビーとなってしまうけど
ロイの血はまったく違う。
流れれば流れるほど、体力が奪われて
死に近づいていく。

死を考えた時の、エドワードのパニックは異常だった。
それも己の死ではなく、大切な人の死。
パニックを起こしたエドワードを
そのままにしておくには危険が大きすぎる。
場合によっては、壁から身をのり出して撃たれてしまう。
ロイは、銃を地に落としてエドワードを後ろから抱きしめた。
「大丈夫だ、落ち着きなさい」
「ロ…イ……」

ぎゅっと抱きしめたロイの腕は、とても温かく
パニックを起こしたエドワードを落ち着かせた。