偶然は偶然でしかない
雨の中を歩く。 服も体も濡れて、重たくなっていくけれど どこかで雨宿りという考えは浮かばなかった。 雨宿りしている間にも、アイツは綺麗な女性と会って 愛でも囁いているんだろうと思うと じっとしてはいられなかった。 別に雨宿りしてもしなくても、アイツの行動が 変わる事はないのだけれど。 ふらふら歩き、途中で止まる。 上を見上げて、雲から降り注ぐ雨を体全身で受けた。 雨なんて、空から降ってくるただの水滴だ。 なのに何故だろう……。 「泣いてる…」 呟いた言葉は、雨音に消える。 何しているんだと思いながら、空を見上げていた視線を すっと戻した時……目の前に黒いモノが現れた。 「鋼の……風邪を引く」 目の前には、大きな黒い傘をエドワードの上に差し出し 苦笑いしているロイの姿。 何故ここにいるのか分からない状態で エドワードは驚き、目を見開いた。 そんなエドワードの様子を見て、ロイは無理矢理手を掴み 持っていた大きな傘をエドワードに持たせた。 「何ッ…」 「だから、風邪を引くと言っている……持っていなさい」 何故ここにいる? 偶然?それとも、必然? 「何でココにいるんだよ……」 真実が知りたくて、エドワードは口にした。 答えて欲しかったのは、たった一言。 『君がココにいたから』 なんて……ありえない考えも、ほどほどにしろという感じだ。 ロイがこんな事言うわけがない。 それは分かりきっていた事だ。 だって、エドワードの言葉にロイは…… 「マスタング様ー?」 あぁ……時間切れ、女性の声が聞こえる。 ロイは、何も言葉にしなかった。 ただ、困ったような苦い笑みを浮かべただけ。 「早く…宿に戻りなさい……風邪を引く」 女性の方へ足を進めていくロイは、雨に濡れた。 濡れるのを防いでいた傘は、エドワードの手の中だ。 「引かない…」 偶然か必然か、真実を知りたかった。 願わくば、少しでも俺のために動いてくれる事。 …でも。 「風邪なんか……引かないよ…」 偶然は偶然でしかないんだと。 雨なんて、空から降ってくるただの水滴だ。 なのに何故だろう……。 その水滴は、大粒の涙にも見えるんだ。 |