涙でぐしゃぐしゃ


遠くで汽車の音がした。
エドワードの耳に聞こえてくるのは
きっと乗るはずだった汽車の音。
「さっさと歩け」
「痛っ」
町の人に囲まれて、縛られて
連れて来られた場所が、生まれたあの洞窟。
ここの天井の宝石は、町の人の手により……もうあまり多くない。
綺麗な青色の洞窟も、人の手が入ってしまえば
ただの洞窟になってしまうという事だ。

それは、鋼玉も同じ。

寿命だったり、自ら望んで命を絶ったりすれば
綺麗な宝石にかわるけれど
人に殺されれば、それだけ不純物が入り
例え、宝石となっても、人の手がとれるようなモノではなくなる。
それを、エドワードを捕まえてる彼らは知らない。

「ここ…なんで……」
洞窟の奥に到着して、エドワードはそっと声を出した。
わざわざ、この洞窟につれてきた意味は何なのか
「鋼玉は、死ぬ時宝石になるんだろう?
 血も涙も宝石になってくれるなら
 この洞窟で死んでくれたら、洞窟の宝石も復活するかとね」
笑みを浮かべてる町の人達は、狂ってる。
そんなに宝石が欲しければ、働いて頑張って働いて
稼いだお金で買えばイイ事なのに……。
「宝石に、ならない」
「は?」
後ろに縛られた手を動かして、エドワードは縄を解こうとする。
縄が手に食い込んで、血が出てきているけど
気にしない、痛みに負けたら生きれない。
何をする気だと、周りの人間が睨んでくる中で
エドワードは、洞窟に響くほど大きな声で言い放った。


「ロイは要らないって言った、俺は…ならないッ」


ぽたっと血が落ちた。
逃げ出そうとしている鋼玉。
それを見てた人は、慌てて取り押さえようとした。
取り押さえようとして、近づいてエドワードの手から流れる
血を見た時……。

彼らの瞳は、今まで以上に輝き始めた。

「宝石だ……」
誰かが呟いた。

「え……?」
何の事だろう、もうこの洞窟に宝石は
ほとんどない……。
人の手によって、削られてしまったからだ。
まだエドワードは死んでない。
死んでないのだから、宝石になるはずもないのに
人々は、エドワードに視線を向けて
今にも襲い掛かってきそうなぐらいの、興奮を見せる。

「血は、ルビーになるのか……」

その言葉を聞き、エドワードは小さく震えながら
後ろを振り向いて、己の血を見つめた。

手首から流れた血は、洞窟の地に付いた瞬間
小さな球体の塊になった。
コロンと嫌な音がする。
もう……液体ではない、血でもない。
「嫌、だ……」

そのモノは、人ならぬ故に
体の全てが宝石と化す。
それは、死を迎える時だという……。

町の人の視線が怖い。
早く宝石になってしまえという
その視線が、エドワードを突き刺す。

「嫌だ、生きたい」

ぽろぽろ流れた涙も、地に付いた瞬間
小さな球体の塊に変わる。
エドワードの周りで、コロコロと球体の宝石が増えていく。



病気だって教えてくれたんだよ
治るって言ってくれたんだよ
宝石なんて要らないって

好きだって……


涙でぐしゃぐしゃな顔
周りで宝石が弾む音がしている
人々が、必死にそれをかき集めていた。

でも……そんな事、どうでもよかった。

エドワードは、彼の名前を精一杯叫んだ。

「ロイーーッ」