泡風呂
生きる洞窟、そう呼ばれる洞窟の天井は全て 青い宝石サファイアで出来ていた。 最初は、その宝石を少しずつ削って金に換えていたのだが ある日、その奥深くから、人ならぬ人が生まれるという事を知る。 生まれたモノは人ではない。 しかし、人と同じ形をし人と同じ生活をする。 そのモノは、人ならぬ故に、死を迎える時 体の全てが宝石と化す。 体全てが鉱物で出来ている。 しかし人ならぬ人故に、動き逃げる。 人 故に、本能で逃げる。 「だから俺達は、逃げる前に縛りつけておくんだけどよ」 金になる宝石を目の前に、逃がしてはならない。 逃がして、誰かの手に渡るぐらいならば…… そう考える者も少なくないと言う。 「宝石になる体を持っているから、鋼玉……よく出来た名前だ」 「あぁ…」 外に出て、扉を閉めてそれに体を預けて話を聞く。 右手を口元にもっていき、鋼玉という名を聞き小さく笑った。 その小さな笑みに気付かず、ベラベラと鋼玉の事を話した者達は その場から去って行く。 どうやら、逃げた鋼玉を捜し続けるようだ。 去っていく者達を見て、ゆっくりと扉に預けていた体を起こし 扉を開けて、一歩、家の中に入った時。 遠くから、言い忘れていたのか大きな声が聞こえてきた。 「鋼玉は、金髪に金の瞳の子供なんだ! 見つけたら知らせてくれよ」 ロイは背を向けたまま、手を上げて軽く振り 家の中に入り、扉をバタンと閉めた。 「ロイ!風呂っ」 「……昼間からお風呂?」 扉を閉めて前を向くと、目の前にはエドワードが居た。 ロイの服の端をぎゅっと掴み、目を輝かせている。 「風呂っ、泡風呂!泡、泡」 ぐいぐいと引っ張りながら、お風呂場まで連れて行く。 もうお風呂に入る気でいるエドワードは ロイの顔など見ないで、お風呂場だけに視線を向けていた。 「脱げない……」 脱衣所に着いたはいいが、ロイの服を掴んだままの状態で 服が脱げるはずもなく、小さく呟いた。 ロイは小さく笑いながら、エドワードの手を自分の服から離し エドワードの服のボタンを外し始める。 「私の服を掴んでいては脱げないだろう?」 「そっか…そうだよな」 ロイに怒られたと思ったエドワードの声は どんどんと小さくなっていく。 その様子を見て、ロイは笑いながらポンッと背中を押した。 「後は自分で出来るな?バスタオル持ってくるから さっさと入りなさい……キミの好きな泡風呂だ」 エドワードの服のボタンを外して、脱衣所を去るロイに エドワードは微笑んで、服を脱ぎ捨てお風呂に向かった。 「ロイ、優しい…」 お風呂場から響いた声が脱衣所に向かって放たれる。 脱衣所には、バスタオルを持ったロイが壁に背を預けていた。 「私は元から優しいと思うのだがね……」 「違う、だって……」 俺、鋼玉なのに……。 ポチャン…と水滴が落ちる音がした。 「宝石、要る?」 エドワードの言葉に、ロイは小さく溜息を吐いた。 死を迎える時、体の全てが宝石と化す。 そんな体だからなのか、エドワードが言葉を綺麗に繋げれた事はない。 言葉の一つ一つを、必死に繋げて片言に話す。 「要らないよ、出ておいで…エドワード のぼせたら大変だ」 「………うん」 |