雪消ノ時 -9-


5日後と言われてから、もう4日が過ぎ
明日の夜だと、弁丸は幸せそうに笑っていた。
その様子を見て、佐助は小さく笑い返していた。

本当に平和だな……そう呟いた佐助の言葉は
呼び出される事で、崩れる事となった。


すぐ目の前にには、この地にやってきた時と同じく
武田信玄が座っている。

「猿飛佐助、参りました」

戦から帰ってきた信玄は、戦に出る前と変わらぬ笑顔で
今度は、共に戦に向かう事を告げてきた。
一瞬、佐助は目を見開き驚く。
まさかのまさかだ……忍びとはいえ、まだ幼い自分。
自分よりも役に立つ兵士がいる中で、連れて行くのは、佐助だと言う。
確かに、忍びはそういう仕事を主にしていて
子供のお守りをしていたのは例外にあたる。
だから、戦に連れて行くというのは当たり前と言えば当たり前なのだが

「弁丸の傍から、離れるのが嫌なのか?」

小さく笑いながら放たれた言葉が、佐助に突き刺さる。

「まさか……元々、忍びはこういう仕事をするモノですから」

離れるのが嫌だというわけではない…。
生まれてからずっと一緒に居たわけではないし
たまたま、お守りを命令とされたわけなのだから
ただ……ただ嫌な感じがしたのは、離れる事ではなく

『次の満月まで、あと5日らしい…楽しみだな、佐助』

笑顔で話していた弁丸の顔から、笑みが消えるのではないかという事。
話を聞いていけば、すぐに帰ってくる仕事であるが
明日の朝には、出掛けてしまうという。
もちろん、弁丸が楽しみにしていた満月の夜は間に合うはずもない。

信玄に頭を下げ、その場から去る。
仕事だからと言えば、納得はするだろうが
あの小さな主は、無理に笑うであろう。

「あー、面倒臭いなぁ〜……」

どうするか、話すべきだろうが……。
悩みながら歩いていると、遠くの方から大きな声が聞こえてくる。

「弁丸様ッどこに行かれましたかッ!」

どうやら、また勉強から逃げ出した様子。
佐助は溜息を吐きながら、言うという行動を諦めた。

約束をしていたわけでもない、ただ弁丸が勝手に決めた事。
言う義務など、あるわけもないし
それを言うならば、忍びは仕事の方が優先される事。
子供は、勉強する事が仕事だ。
その仕事を逃げ出してる人間の言葉を聴くのは

「いかがなもんかね……」