雪消ノ時 -7-
茶屋に向かうと、頼むのはいつも決まって団子。 佐助はその様子に苦笑しながら、隣で茶を啜っていた。 雇われて、たった数日だが分かった事がある。 弁丸は、子供らしくない武士である時と 「うむ…いつ食べても、この茶屋の団子は美味いっ」 こうして団子を食べている時とでは、表情がまったく違う。 団子を食べている時は、武田信玄の言う通り 笑って騒いで、団子が大好物の子供らしい子供。 「佐助は…食べないのか?」 考え事をしていた佐助に対して、弁丸は顔を覗かせる。 その顔を見て、佐助は小さく溜息を吐いた。 「食べます、弁丸様……口、付いてますよ」 沢山の種類の団子を食べて、餡の付いたモノも食べた。 弁丸は美味しいからと幸せそうに食べるが 口元は、餡でいっぱいになっている。 持っていた手拭いで、弁丸の口元を強めに擦ってやると 弁丸は、その強さに少し痛そうに表情を歪めた。 「痛いぞ……」 「コレぐらい、我慢しなさい……」 本当に、忍びの郷を出る前に考えていた 『どう考えてもお守り』になるという状態が 当て嵌まった現状である。 溜息交じりでも、佐助はこの仕事は結構気に入っている。 忍びらしい仕事は一切ないのだ。 体が鈍ると考えていたが、弁丸のお守りは予想以上に体力を使う。 気付けば、鍛練になっているという。 弁丸は団子を食べながら、実は少しビクビクしていた。 初めて、他の忍びとは違う行動をして違う言葉を出した者だ。 子供ながら、迷惑をかけたくないと感じ そして、何より…嫌われたくないと感じていた。 そんな時に、佐助といったら茶ばかり啜っていて 肝心な美味しい団子を食べようとはしない。 「佐助は…食べないのか?」 そう問いをかけると、急に小さい溜息を吐かれた。 何かまずい事を言ったのだろうか…内心ドキドキしながら 次の言葉を待つと、佐助は手拭いを出して 「食べます、弁丸様……口、付いてますよ」 言いながら、口元を強めに擦ってきた……。 正直、嬉しいけど口元は痛い。 「痛いぞ……」 「コレぐらい、我慢しなさい……」 我慢しなさいって、また酷いことを言う。 佐助の行動がまるで母上みたいで 弁丸は少し目の奥がツンとしてきた。 |