雪消ノ時 -4-
「来るぞ?」 子供らしい子供などと誰が言っただろうか…。 この笑みは、相手を試す時の… 忍びに命を預けて良いか試す時の笑みだ。 佐助が思った時には、既に足元にクナイが数本刺さっていた。 唇を軽く噛み、その場で集中する。 これは実力を見るためなのか…。 イヤ、考えれば当たり前なのかもしれない。 武田の大事な子を、ただの契約期間だけ護衛になる忍びに 任せられるかなどと言ったら、上の者達は納得しないだろう。 例え、武田信玄が納得をして任せたとしてもだ。 「ったく……イキナリはないでしょイキナリは…」 ぼやきながらも、クナイなどの武器をかわしていく。 飛んでくる武器の軌道から、敵がどこに居るかを知り 小さな手裏剣を手に、投げようとした。 「駄目だッ!!」 すると、後ろで立ったままの弁丸が大声を上げた。 「は?何が駄目って…」 意味が分からず、ふっと弁丸を見た時には 手に持っていた手裏剣は、敵の武器により地に落とされていた。 主の言う事は、ある意味絶対だ。 どうしようもなく、また佐助は逃げ続ける事になっていた。 チラリと弁丸を見ると、だんだん最初の笑みが消えて 早くこの戦いが終わらないかと焦り始めているのが、すぐに分かった。 意味が分からなかった。 実力を見るためなら、弁丸は『駄目』などと言わないだろう。 丁度、敵を倒そうと考え手裏剣を出していたわけなのだから…。 本来なら、何を真っ先に考えるか……それを佐助は考えながら動いていた。 そこで頭を一瞬、流れてきたのは 『来るぞ?』 という弁丸の言葉だった。 謀ったのかとさえ思うあの笑み…。 まさか…イヤ、でも主に謀られたとしても契約をしているのは 弁丸自身ではなく、武田軍という軍である。 ならば、武田軍が裏切る事のない限り、どんな仕打ちを受けようが それそのモノが仕事ならば仕方ないと思う。 例え、謀られようとも…今の仕事は、弁丸を護衛する事。 それ以外何でもないはずだ。 そう考えた時、佐助は飛び飛びに移動し避けていた行動から ピタッと足を止め、弁丸を背に隠した。 「…佐助……?」 疑問に思った弁丸が佐助の服を少し掴む。 飛び飛びに移動していたら、いつ弁丸が狙われてもおかしくない そんな事だけはさせてはならない…。 佐助の考えはまとまったのか…ニヤリ笑みを浮かべ 「ま、仕事なんでね…今、俺の命は貴方のモノですよ」 弁丸の前から動こうとは考えなくなった。 |