背中と手 -中-
温かい腕を引っ張っていく。 すると後ろからクスクスと笑い声が聞こえてきた。 同時に、進む足が止まりそうになっていたので 「佐助、何をしておるっ!!さっさと足を進めぬか」 声を出せば、佐助は笑ったまま 「あーはいはい、行きますから…」 なんて言葉が出てきた。 幼い頃…佐助が任務から帰って来て おかえりと言いながら近づいた時。 佐助は、両腕を背中に隠した。 『まだ手を洗っていませんから』 なんて苦笑していたけれど、弁丸はちゃんと分かっていた。 洗ったのだろうが、しっかりと血の臭いがしていたのだ。 任務だから人を殺める事もあるだろう。 主に偵察や情報収集だとはいえ、身が危険になれば手は出るだろうし 何より、武田の忍びとして…武田に反するモノで 報告していては間に合わない事に関しては 独断で動く事もするであろうから……。 まだ子供。 自分よりは、大きくて大人で掴む手は大きかったけれど でも、まだ佐助も子供だ。 そんな頃も、こうして腕を掴んだだろうか…。 『団子を食べに行くぞ!』 『はい?』 イヤ、小さかった弁丸にとっては子供である佐助でも 腕は大きく、手も大きくて…。 掴めないからと、袖をぎゅっと掴んで歩いたのだ。 この頃は、今のようなしっかりとした忍びの服装ではなく ある程度の軽装で、弁丸にとっては袖は掴みやすいモノだった。 月日が過ぎ、互いに成長をしていった。 いつまで経っても、佐助の手は大きくて温かい。 佐助に言えば、何言ってるんですかっと笑い飛ばされるが 幸村は、幼き頃からずっとずっと思ってきていた事だ。 いつもその手で触れて、小言を言いながら付いて来てくれて。 苦笑しながらも、その腕で助けてくれる。 なんだかんだで甘いトコロが佐助の特徴だ。 思い出しながら歩いていたら、もう目的地についてしまった。 団子を食べる事が目的だったはずなのに 今では、もう少し思い出していたかったなどと考えてしまう。 どうせなら、佐助に昔の事を話してみようと思い 幸村は、まず団子とお茶を注文するトコロから始めることにした。 |