背中と手 -後-


茶屋に到着して、団子とお茶を頼み
2人揃って、ぼーっと空を見上げた。
「懐かしいですね……よく、ここまで成長しましたよ」
風に流れる雲を見つめ、佐助はぼそりと呟いた。
それに反応して、照れ臭そうに幸村は笑いながら
「生きていれば成長は当たり前であろう…」
なんて小さく答えた。

鳥が飛んでる。
鳴き声を聞きながら、幸村は目を瞑った。
平和…戦いが全てのようなこの時代で
鳥は空から何を見ているのだろう。
考えているうちに、団子とお茶が自分の目の前に到着した。

「佐助は…相変わらず、温かい手を持っているな……」
団子を銜えながら、放った言葉に
佐助が軽くお茶を吹いた。
「ちょ、何言ってんの旦那ッ」
「何って、そのままであろう?」
佐助の様子を見て、幸村はクスクス笑い出し
佐助は、顔を見られないようにと少し視線を逸らした。


また、空を見上げ…飛ぶ鳥を見た。
「平和だな…昔みたいだ……」
幸村は珍しく、団子を食べない状態で空を見上げたまま
まるで、昔に戻りたいと言ってるようにも見える。
「旦那は、戻りたいわけ?」
同じく空を見上げ、そっと言葉を放つ。
その佐助の言葉に、幸村は小さく笑いながら
「戻るために…お館様には、頑張っていただかねばな」
そう話をした。
あぁ〜、こうやって大きくなってきたのだ…
弁丸から幸村へ、背中の大きさは変わり続けてる。
佐助は、小さな笑みにつられて同じく笑う。
そして自分の手を見て、思い出す。

『佐助は…相変わらず、温かい手を持っているな……』

温かいかどうかなんて、本人には分からない。
けれど、大切な主が温かいと言ってくれているのだ
ならば、主が冷たく感じたその時に……


「ちゃんと俺も働きますからね、この手で…」
「うむ…」
佐助は手を空へと掲げた。


そっと、手を差し伸べれたら良い…。
その手を受け取るかという問題は別の事。
ただ、差し伸べれたら良いと感じた。
この、まだまだ子供な主の背中と共に…
この手も、進めたら良いと……