笑えない



目の前に差し出されたハンカチを受け取ろうとした。

まさかと思って、電話を切って走り出した。

気付けば







赤い







何やってんだよ、って言いたかった。
だってそうじゃん?
返そうとするハンカチを、赤く染めちゃうなんてさ・・・。

お前それでも野良犬かよ、って言いたかった。
自分を傷付ける奴が近づいたら、気付いて逃げるのが
・・・本当の犬ってもんだろ?

・・・人殺しの貴方が何でテニスをやってるの・・・』

おかしいよ・・・どう聞いたって、あれはの所為じゃない。

『ッ・・か・・・あ・・さ・・・ん・・・・』

あぁ、野良犬でも・・・親だから気付かなかったのか・・・。
イヤ、のことだから・・・。
気付いても、逃げる気なんてなかっただろうな・・・。

『ゴメンな、不二・・英二・・またハンカチ、赤く染まった』

本当だよね・・・何染めてるんだよ・・・。
染めないで返すのが普通だろ?
ねぇ、・・・何平気な顔してるの・・・。
親に刺されたんだよ?自分を生んでくれた親に刺されたんだよ?
泣いてよ・・・何で・・・何で泣いてくれないんだよ・・・。
こんな時ぐらい、泣いたっていいじゃない・・・。




その場から、誰も動けない




『名前・・・呼んでくれてありがとう・・・母さん』




後ろから歩いてくるのが、自分の親だと気付いていたのに
振り向きもせず、殺気を放つ母親を無視して
気付かぬふりをした野良犬。

ハンカチを受け取ろうとして、その時起きた出来事に
ハンカチは真っ赤に染まり、受け取る気をなくした
だって、ハンカチよりも何よりも・・・目の前で
が、倒れて行く・・・そんな姿を見てしまったら
英二も不二も、その場から動けない。

千石は走って、走って、走った。
けど、遅かった・・・。
間に合えと必死になって、テニスをするよりきっと必死
まさかと思った勘は見事に的中。
は、呼んでくれてありがとうって笑っていたけど

正直、ここに居るみんな















笑えないよ















笑えないよ















笑えるわけないよ















「「「ッ・・ーーーーーーーーーー!!!」」」

倒れたに、近づく皆・・・千石はの母親をじっと見つめていた。
「何よ、悪いのは・・人殺しじゃない・・・」
赤く染まったナイフを持ちながら、ずっと呟き続ける母親。
「跡部・・・を頼むよ・・・・」
「・・・・あぁ・・」
昔から任せていたように、千石は跡部にを任せ
母親を連れてコートの外に出て行った。
しばらくして、止血をしながら・・・跡部に連れられ
もコートの外へと出て行った。

次の日、嘘のように晴れわたり嘘のように練習を再開していた。
丁度今日が合宿終了日。
だけど、その場に・・・


千石、跡部、の3人はいなかった。