呼んでくれて



「あと1日しかないから・・・今日は昨日の倍、特訓やるぞ!」

(((あれの倍ってどんなんだよ!!)))

合宿6日目。
あと1日しかないからと、はいつも以上に張り切って
皆はいつも以上に疲れる事を予想していた。
揃ったのは、青学、氷帝メンバーと・・・。
何故かいつも傍に居た千石がいなく、練習メニューである特訓は
朝早くからゆっくりと始まることとなった。
「俺が球出ししてやるんだ、ちゃんと返せよ?」
皆はそのの言葉に驚きを隠せなかった。
青学にいた頃は『テニスをやったことがない』からと
テニスには一切関わらなかった
氷帝にいた頃は『めんどくさい』からと
テニスには一切関わらなかった
それが、そのが『球出し』をするというのだ・・・。
、また白いラケット?」
「んー、まーね・・・もう1個のラケットは一応試合用だし」
不二が問いかけ、が答え
「ってか、あれ?ラケットってさ・・・」
「千石お父さんが新しく作ってくれたから、あるんだよ」
英二が問いかけ、が答え
「もーいいから始めようよ」
「はいはい・・・んじゃ、始めるぞ〜〜」
ジローが話して、ようやく練習が始まった。

『え・・・な、何やってんだよ親父!何で止めないんだ』
『・・・少し、怪我してな・・・すまない・・・』
『怪我って・・・親父、そいつにまさか・・・』

「っとと、やべ・・・用事あったんだった・・・
悪い、ちょっと個人で練習しててくれ」
急に何を思い出したのか、球出しをやめは急いで部屋へと戻っていった。
正直、戻ってくれて皆はホッとしていた・・・。
何故なら・・・
「あの細い腕で、何であんな重い打球が打てるんだよ・・・」
「信じらんねー・・・」
皆は息切れしながら、死ぬほど疲れていたのだった。
がボールを打つ度、皆の瞳が輝いていった。
が打つので、しっかり見れたのは今回が初めてだから・・・
前の実力が知りたいと戦った時は、飛んでくる球を返すことで必死になっていて
を見ることすらできなかった状態の試合だったのだ。
だから、今回がしっかり見れる初めての機会。
輝いていくのはよかったが、ポンッと打った軽そうに見えるボールは
自分達のコートに入った瞬間、急激に重い打球へと変化した。
イヤ、変化したのではなく・・・ただ軽そうに見えただけで本当は
初めから重かったのだ・・・。
改めて、の強さを誰もが実感していた。

『・・・・を、頼むよ・・・清純・・・』
『ちょっ親父!』

「あったあった、ちゃんと返さないとな、英二と不二に・・・」
部屋でゴソゴソしている間も、皆は練習をやめることなく
皆、汗だくで練習をしていた。
「そろそろ休憩でいいぞ?」
部屋から戻ってきたの一言で、ようやく皆が休憩をとり
誰もが汗だくでコートにバタリと寝そべったり
フェンスに、もたれたり・・・日陰に行ったりとゆったりと休憩をしていた。
その中で、丁度コートの入り口付近に居た英二と不二にはゆっくりと近づいていった。
「あれ?何・・・?・・・」
「休憩なら、も休憩した方がいいんじゃない?」
「んー・・・まぁ、そうなんだけどな・・・」
と英二と不二が話をしている間、他の皆は何故かコートの外に視線を向けていた。
「なんか、ちゃんに似た女の人がいる〜・・・」
「うわっマジじゃん・・・なんかこっち来るみたいだぜ?」
コートの外に女性が居ると視線が集まる・・・。
そんな中、必死になって千石が走ってきた。

「血で汚れちゃったからな・・・返そうと思って・・」
「あぁ、ハンカチね・・・」
「べっつに気にしなくてもいいのににゃ・・・」
が、ハンカチを英二と不二に渡そうとハンカチを目の前に出したその時

ーーー!!逃げろ・・・ッ!!」

千石の叫びが聞こえ
周りがざわめき
グサッと小さな嫌な音が響いたと思ったら
皆の目の前が真っ赤に染まっていた。
周りから見れば、信じられない光景だった。
に似た女性がこちらに歩いてきたかと思えば・・・
の背にナイフを突き刺し、ニッコリと笑みを浮かべていた
・・・人殺しの貴方が何でテニスをやってるの・・・」
人を刺して、最初の一言・・・。
「ッ・・か・・・あ・・さ・・・ん・・・・」
ナイフが刺さったまま、ゆっくりと振り向けばの瞳に懐かしき母の姿が見えた。
綺麗な容姿なのに、綺麗な髪に綺麗な瞳で・・・とても
とても綺麗な人で・・・自慢の母だったのに・・・。
今の母の瞳には、光がなく・・・笑みを浮かべているのに・・・
目は笑っていなかった。
周りの皆は、刺され赤く染まっていくを早く病院に連れて行きたかったが
の母がこれ以上何かをしないためにその場から動かず
刺激を与えないようにしていた・・・。
刺されたは、ただ母を見つめそしてゆっくりと笑みを浮かべた。

「何笑ってるの・・・人殺しが・・・」

テニスコート・・・が立つ所だけ、赤く染まっていく。

「ゴメンな、不二・・英二・・またハンカチ、赤く染まった」

が手に持つ返すはずだったハンカチ・・・もう既に真っ赤に染まっていた。

「何・・・笑ってるのよ・・・」

助けたいのに、誰も動けない・・・動くことができない。

「何?ってそりゃ・・・母さん、呼んでくれたから・・・」

こんな状況なのに・・・野良犬は笑っていた。

「・・・笑うな・・・人殺しの癖にッ」

赤く染まっているのに、幸せそうに嬉しそうに笑っていた。

「・・・人殺しの癖に、私の・・・私の息子を返してッ」

そして、ゆっくりと崩れ倒れていった。
崩れ倒れる瞬間・・・誰もが聞いてしまった言葉・・・。
それが、この合宿のが喋った最後の言葉だった。


『名前・・・呼んでくれてありがとう・・・母さん』


「「「ッ・・ーーーーーーーーーー!!!」」」