精一杯の優しさ



千石家がを引き取って数年。
中学生になるということで、をどこの中学に行かせるかで
一時、千石家でゴタゴタが起きた。
ずっと笑わなかったが、ゆっくりと笑顔を取り戻し・・・
ゴタゴタが起きて清純と父が喧嘩をしている所・・・
は、思いっきり清純に蹴りを入れていた。
『俺のことで喧嘩するなっつーの!』
『痛っ・・・、酷いよ〜蹴るなんてさ・・・』
涙目になりに文句を言う清純を見て、は笑い
そのの笑顔で、千石家はいつもの倍も明るく過ごすことができた。
そんな中、結局中学校はどうするのかと父に言われ
は少し考え、ゆっくりとこう答えたのだ
『迷惑って分かってて、言ってもいいですか・・・?』
『・・・急に敬語だね、・・・何だい?』
『父の母校の生徒で・・・通うの、弟ので・・・』
の話は・・・
母の母校である【山吹】は清純に余計な心配などがかけたくないからと断り
父の母校【氷帝】の生徒になりたい・・・。
が、あの事故がなければ弟が希望していて行くはずだった
【青学】に通いたいということだった。
、迷惑というのはね・・・人のしたことで不快になったり困ったりする事で
はまだ何もしてないし、私は不快になったりしないよ?
もちろん、困る時もあるかもだけど・・・その時は、軽く解決させるから・・・ね?』
そんな父の言葉に、はありがとうと何度も言っていた。
氷帝の生徒で青学に通うという不思議な事になった事で
他の生徒からのイジメがないかと少し不安になった父は
氷帝で一番頼りになる跡部にを任せ・・・
また、跡部もそんなを過去と共に受け入れた。


「ってことで・・・俺の大事な大事な義兄弟は
正式には氷帝の生徒、通っているのは青学なんて事になったわけだ・・・・」


長い・・・長い話が終わった・・・。
話している千石にとっては、とても短い話だったかもしれない
が、聞いている皆にとっては、とてもじゃないが短いとは言い切れない。
の気持ちになって聞いていたから余計・・・

辛く、悲しい、長いモノに感じたのだ。

この話を最後まで聞いて、青学の皆の頭を過ぎったモノは
随分前に聞いた、の言葉だった。
『清純は、俺の1番大切な人だ・・・』
『氷帝とは微妙な関係、2番目に大切な人が部長やってるからな』
『おぉ〜ムカツイてろ〜、俺はあの2人のためなら死んでもいいぞ?』
『それほど大切だ・・・。』

「あぁ・・・だから大切なんだ・・・」

誰もが納得できた・・・

納得できて、話も聞けた・・・けど、誰も部屋に戻ろうとしない
戻ればいいのに、戻ろうともせずしかも喋ろうともしない
ただ、黙り込み食堂は人数は多く集まっているのにもかかわらず・・・
どこよりも静かに思えた。

静かにしていたその時・・・どこからか泣き声が聞こえきた。
「泣き・・・声・・・?」
不思議に思う皆に、千石は苦笑いしながらゆっくりと口を開いた。

「多分、が泣いてるんだよ・・・で、どうするのかな・・・」

泣いていると聞いてさらに静まるこの場で、千石はニッコリと笑みを浮かべていた
「どうするって・・・?」
英二の言葉に千石はニヤリとし皆を見渡して・・・
、もう氷帝でも青学でもどっちに通ってもいいってさ・・・」
の意見など聞いているはずがないのに、千石は次々と言葉を放っていく

「物じゃないけどさ・・・ねぇ、のこと・・・欲しい?」

言われて皆がその場に固まる。

「いいよ、どっちの学校に行かせても・・・は俺の自由にしていいって言ったから」

などと言うが、もちろんはそんな言葉は言ってない。

「明日・・・試合しよっか・・・」




−−争奪戦 青学 VS 氷帝−−




「この試合を止めれるのは、だけってことで・・・」
勝手に決めている千石だったが・・・
きっとがこのことを聞いて、見てその場に居たら・・・
『俺のことで喧嘩するなっつーの!』なんて自分を蹴ったように
皆を止めてくれるんじゃないかなんて・・・思って
あの時、自分を蹴った時のが1番・・・
過去を感じさせず、自然体で笑えていたから

なんていう・・・千石の精一杯の優しさだったりもしたのだ。