小さな望み



強い

それが、誰もが思ったことだ。
どんなに強い球でも、綺麗に自分達のコートにかえされる。
弱いときは弱く、強いときは強く・・・。
けど、決して止まることがない

まるで、【風】

「あの強さは反則だよな〜・・・」
桃城が呟く言葉に、誰もが納得できた。
との試合からしばらくして、皆は荷物を置き練習を始めた。
練習が終われば、明日に備えての休息なわけだが・・・。
今、氷帝、青学の皆は食堂に集まって食事をしている所であった。
食堂なら、もやってくるだろう・・・。
そう思って、誰もがここに集まって待っているのだが
来たのはではなく・・・
「あらら、待ち伏せ?そんなにのことが気になるんだ・・・」
来たのは、千石清純だった。
「あっそう言えば・・・話すって・・・」
「ん?何々・・・もう知りたいって?」
千石は英二の言葉に、苦笑いしながらコップに水を汲む
その行動を誰もが見て、しばらく沈黙が流れた。

「・・俺はゴメンだ・・・あんな話は1回で充分だ・・・」
沈黙を1番最初に破ったのが、跡部だった。
「あんな話?・・・1回?」
誰もが不思議に思う言葉を残し、跡部はゆっくりと食堂を出て行った。
「あらら、景ちゃん・・・勇気ないね〜」
などとちゃかす千石だが、表情は笑ってはなくとても悲しい表情だった。
「教えてもいいけど・・・今後、できるだけに辛い思いはさせないことが条件」
千石は、コップの水を飲み干すと、ゆっくりと顔をあげ
皆に真剣な表情を見せた。
「あり得ないような出来事が起きたんだ・・・・聞く覚悟・・・ある?」
その言葉に、誰もが息を飲んだ・・・。
千石が言うには・・・

『漫画みたいな出来事が起きたんだよ・・・けど、実際起きたらとてもじゃないけど


俺は正気じゃいられない・・・。』


だと言う・・・。
どんなことなのだろう、と誰もが思う・・・。
聞きたくない気もする・・・聞いたら、きっと聞かなかったことにはできない。
けれど、けれど・・・

!いっきまーーーすvv』

『てめーら!俺のカボチャコロッケのために・・・勝て!』

『うちのバカ共は、独占欲強くてさ〜・・・俺がどっか言ったら人殺しそうで』

『どうやら、お前達と会うのは『偶然』はなく『必然』だけらしいな』




『野良犬は、同じ場所にずっと居ねーんだよ』


純粋に・・・好きなんだ・・・誰もが、野良犬の・・・

のことを・・・。

別に、付き合いたいとか結婚したいなんて思うわけじゃない
ただ、本当に独りで苦しんでるようだから・・・
できることなら、助けたいんだ・・・
できることなら、救いたいんだ・・・

別に、野良犬を飼い犬にする気は誰だってない
ただ、助けたい・・・救いたい・・・

野良犬に、エサをあげちゃいけないって誰が決めた?

与えて貰っている自分達だから、与えられるなら与えたい

そう思うだけ・・・


「・・・覚悟はある見たいだね・・・じゃ、話すよ・・・」



「こんばんは・・・おじさん・・・」
「こんばんは、・・・いい加減、お父さんって言ってほしいな・・・」
その頃、は自室で千石の父親と会っていた。
「・・・言える、資格がありません・・・」
「親子に、資格なんていらないよ・・・」
辛そうな表情を見せ、唇を噛むを見てニッコリ微笑む千石の父。
その笑みを見て、は唇を噛むことをやめた。
「つい最近まで・・・と名乗ってたそうじゃないか・・・」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「君には【千石】という名は重みかね?」
「いえ、そういうわけじゃ・・・」
「じゃぁ、何だね・・・」
数分間、静かに時間が流れた・・・。
もう外は暗くなり、虫たちの声が聞こえてくる。
月は雲に隠れ、星は出ず・・・辺りは真っ暗闇になっていた。
「まだ・・・小さな・・小さな望みを期待しているのかもしれません・・・」



もう1度、父と母に・・・俺の名を呼んでもらえないかと・・・