FLY WIND



『もう、過去に縛られるの・・・やめようよ・・・』

『もう捨てよう・・・は・・・』


「今日から一週間、合同強化合宿だ・・・で、今からコーチを紹介したいと思う」
青学、氷帝の皆が集まった合宿場で、竜崎先生が話を始めていた。
いつもならレギュラー陣だけという話になるのだが・・・
今回は【野良犬】のことが関わっている
そのためか、レギュラー陣ではないのに数名がこの合宿についてきた。
そのことに文句を言う者は誰もいない・・・。
誰だって、野良犬のことを想う気持ちは同じだから・・・。
「青学担当の私、竜崎スミレと」
「氷帝担当・・・榊」
コーチの紹介で、竜崎先生と榊監督がそれぞれ紹介され・・・
「で、最後・・・青学と氷帝の両方を担当してもらうのが・・・」
と、竜崎先生が言葉を放った瞬間・・・。
皆の表情が変わった・・・。
「この俺・・・【千石】だ・・・」
皆の元にやってきたのは、【】そう・・・野良犬の彼だ・・・。
けれど、が言った言葉は・・・

【千石 

「どういう・・・」
誰もがその場でどうしたらいいのか分からなくなっていた。
当たり前だろう、と言われていた人物が・・・
千石だと・・・苗字が変わって現れるなど・・・。
誰が想像しただろうか・・・。
「それは、この一週間で俺が話すよ?」
の後ろにひょっこり出てきた千石清純がニッコリと笑みを浮かべ
皆へと言葉を放っていた・・・。
誰もが驚く、そんな中・・・跡部だけは驚きもせず
ただ、を見つめていた。
「さて、話したいこともあるだろうが・・・まずは荷物を・・・」
「ちょっと待って下さい、竜崎先生・・・」
集合して、ただ紹介して・・・荷物を泊まる部屋へと運ぶ
ただ、それだけなのに・・・は皆の行動を止めた。
「なんだね・・・・・・」


「俺の所為でしょうけど、彼ら全員・・しばらくテニスと離れてました
よって、・・・・・・・・・・彼らの実力が知りたい・・・」

『彼ら』という言葉に、皆の表情はどんどんと暗い方向へと進む。
もう・・・野良犬は・・・は・・・

名前を呼んでくれない


「ったく、もの凄いことをやるね・・・は・・・」
竜崎先生の言葉の通り、誰もが思っていた。
実力が知りたい?そんなのは嘘だ・・・。
誰もがそう思う・・・

何故なら・・・


「今から、3面コートで氷帝&青学 VS 俺の試合を行う」


誰もが無茶だと思う・・・氷帝と青学のレギュラー陣を合わせ
たった1人で立ち向かうなんて・・・。
しかも、氷帝と青学の人数に合わせたコートのサイズ3面で・・・。
「3面をたった1人で駆け回るって・・・さすが野良犬根性・・・」
驚く皆をよそに、千石はその様子を見てクスクスと笑っていた。
もう、青学の皆だって氷帝の皆だって分かるだろう・・・。
は『テニスをやったことがない』のではない・・・
充分実力のある・・・テニスプレイヤーだ・・・。

それは、の瞳を見ればすぐに分かった。

誰だって無茶だと思うこの試合、しかも野良犬とだ・・・。
イヤだと思うが、誰もその言葉を放たなかった・・・
というよりは、放てなかった。

皆だって、テニスプレイヤーとしてのプライドがある。

たった1人相手に絶対負けたくないという気持ちがある。

はゆっくりと自分のテニスラケットを取り出す。
その様子を見て、誰もが息を呑んだ・・・。
テニスラケットも触らず、テニスボールだって滅多に触れない
自分のラケットを取り出したのだ
だが、驚きはそれだけではなかった。

「あらら、白いラケット・・・この人数相手でまだ本気出さないんだ・・・」

という千石の言葉・・・。
「FLY WIND・・・この白いラケットで、充分だ・・・」

FLY WIND・・・飛ぶ風

それは売られていない、だけのテニスラケット。
「1セットじゃつまらないから、5セットでいくか・・・」

「「「は!?」」」


−−ザ・ベスト・オブ・5セットマッチ 氷帝&青学サービスプレイ!!−−

始まる試合





5セットのはずなのに






試合は、数十分で終わってしまった。