赤き跡



『裏切り続けている』
そう呟いたのは、数分前のこと・・・。
青学には、偽りの姿を見せたこと
本当の自分は冷酷で、冷たくて・・・酷い奴
氷帝にも、偽りの姿を見せている
本当の自分は明るくて、カボチャコロッケ命で・・・バカな奴
どっちが、本当の自分なのか・・・自分にもさっぱりだ
どっちというよりは、両方が自分なんだとも思える・・・。
そうすると、やはり、青学と氷帝・・・どちらも見せている姿は

偽りでしかない

片方だけの自分しか見せていないのだから・・・。
『では、最後となりました赤き跡を残す演奏・・・お聞きになる前に
注意事項がございます。よーくお聞き下さい』
和太鼓の演奏は順々に進められていき、残すはあと1つとなった。
『最後の大太鼓は何十qも響くと言われているほどの大きさの音になります
扉を閉めておきますと、音が室内のみに響き大変危険な音量となりますので
後ろの扉は全て全開にし、演奏を行うこととなります。』
最後の演奏で行う大太鼓は、信じられないぐらいの大きさの音を放つ
なので、注意事項が数個説明されていく・・・。
イヤになるような説明だが、客は誰1人として文句は言わない
もちろん、イヤそうな顔すらしない・・・。
『お聞きに来てくださってとても嬉しいのですが・・・
音により、耳など体調等が危険を感じた場合は、開けてある扉から
速やかに退場をお願いいたします。
これは、皆様のご健康等を配慮してでのことですのでご理解をお願いいたします。
なお、先程言いました通り、扉は全開ですので扉から出ても音は聞こえます』
説明をするのが長いのは、それほど注意をしないと聞けることのできないほど
とても大きく、とても珍しい大太鼓だということ・・。
それを聞くために、会場まで来た客がほとんどだったので
イヤそうな顔をする者など居るはずもなかったのだ。
『それでは、演奏を開始いたします・・・』

「んじゃ、行きますか・・・」

説明の終了と同時に、は控え室から動き出した。


「あ、ちゃんだ」
ジローの言葉に青学、氷帝の全員が舞台に目を向けた。
と、それと同時に演劇用のテープが流れ始める。
『ここは、赤とんぼの野原・・・雨が降り、雷が鳴り終わる頃には
何故か赤とんぼが沢山現れる不思議な野原』
トントン
テープの声が止まると、大太鼓の周りにある小太鼓が鳴らされていく。
全員がを見る中で、はその場から動かず目を瞑りただ立っている。
『やがて晴れわたる空は曇り、雨が降り・・・』
小太鼓の大詰めなのか、雨に見立て小太鼓が綺麗に音色となっていく
誰もが綺麗だと感じていた・・・。
太鼓を叩く皆、音色・・・全てが流れているテープの内容そのものだと
誰もがそう感じていた・・・その時だった。
ドンッ
『雷がなり始めた』
雷と来た所で、はゆっくりと大太鼓を鳴らした。
感動でざわめいていた会場が一瞬にして静かになる。
聞いていた大人は、黙り込み・・・子供は音の大きさに驚き耳を塞いだ。
大太鼓・・・どれぐらい大きいかと説明しろと言われれば
学校に通う者達ならこう答えるのが1番簡単だ・・・。
【体育館の4分の1サイズ】
青学全校1442人が軽く入る体育館・・・。
その4分の1サイズの大太鼓
「信じられないぐらい大きいにゃ・・・」
舞台上にその大太鼓があるにもかかわらず・・・誰もが信じられないと感じる
そんな大きさの大太鼓を、は真剣に叩いていた。
「「「あの細い腕で、どこにそんな力が・・・」」」
と、思ったのは青学、氷帝のメンバーだけでなく
この会場に居た誰もが思ったことだった。
『雷が鳴り終わる頃・・・赤とんぼが、現れる』
クライマックス、劇団赤とんぼの由来ともなった赤き跡を残す演奏
小太鼓は舞台袖に引っ込み、舞台上には大太鼓とだけとなった。
鳴らされていく太鼓に、誰もが黙り込んだまま・・・。
その中で青学、氷帝のメンバーの皆は赤き跡を見て驚いていた
「・・・赤き跡って・・・・・・・・血!?」
驚きを隠せなくて、ただ見つめていた・・・。
あれだけの大太鼓を叩き続けていけば、血も出るだろう・・・。
出ないように叩けばいいが、多分それは許されない・・・。
これが、劇団赤とんぼの赤き跡を残す演奏
客は気付かずとも、青学、氷帝の皆は気付いてしまった。
盛大な拍手と歓声と共に、舞台は幕を閉じ
客が会場を出て行く中・・・青学の皆は急いで控え室へと向かった。
ちゃんに会いたいけど、ま・・いっか・・・」
青学はの元へ向かったが、氷帝はジローの言葉通り・・・
には会わず、会場を後にした・・・。