悪魔



『何様だぁ?んなの野良犬に決まってんだろーがクソがッ』
『なっ・・』
その言葉に、固まる先輩・・・それをよそに、言葉は続けられた
『俺の生活、散々でね・・・あんたの様に楽して生きてきたわけじゃねーのよ』
『らっ楽だと!?』
この言葉には先輩も聞き捨てならなかったようだった。
これまでの人生、大人から見たら短いかもしれない・・・
けど、家族に支えられ・・・自分で考え・・・
いろんな事を思いながら成長してきた自分。
それを『楽』の1つで片づけられるなんて冗談じゃない・・・
でも・・・の言葉を聞いて・・・
この先輩は、今までの人生を楽だと実感するハメになった。


『人を・・・殺したことあります?』


その言葉を言っていたの表情は無表情・・・。
瞳には光すら映っていなかった。
『・・・ッは!?』
こいつは、冗談を言っているのだろうか・・・
それとも、脅しで嘘をついているのだろうか・・・

それとも・・・・・・・・・本当のことなのだろうか・・・

『俺は、1番守らなきゃいけない者を殺した
だから・・・【大事】【大切】と思った者は、もう失いたくない』
『冗・・・談だろ?』
『・・・【大事】【大切】と思った者を傷付けるのは、許せないんですよ』

ドカッと横にあった木に蹴りを入れた・・・。
『・・・それにね、もう赤く染まった俺だから・・・』


何人殺したって、一緒なんですよ・・・


初めて、生まれて初めてかもしれない・・・
助けてほしいと、この先輩は思っていた。
『けっ警察に・・・』
『言えばいいじゃないですか・・・まぁ、言う前に』


殺しますけど


誰でもいい、助けてほしい・・・。
この悪魔から、助けてほしいと・・・そう願った。
『ま・・・手塚国光には謝罪してくださいね・・・』
彼奴が許せば、俺も許しますよ・・・




「遠慮するなよ跡部・・・本気で来い」
手塚の言葉が、コート内に響いた。
大石が話したのは、手塚の怪我のことだけ・・・
というよりも、大石は、そんなことがあったなど知らなかったのだ
ただ知っていたのは、次の日・・・手塚に土下座で謝る先輩が居たこと
そして、その様子を見てにこやかに笑っているの姿だけ。
「2時間は最低でも踊ってもらうぜ、その肩の破滅と共に!」
試合は続いていく・・・。
誰もが応援していた、手塚を跡部を・・・
でも、たった1人だけ・・・応援していなかった者がいた。
ずっとその試合を見続け、決して応援はしなかった。
「後悔はするなよ・・・俺が、お前らの試合を見れるのは」

これが最後なんだからな・・・

そう呟いたの言葉は、誰にも届かなかった。
「手塚はあえて持久戦に挑む覚悟だ!」
放たれた言葉を聞き・・・

はゆっくりと瞳を閉じた。