白い猫
「あ…喰われた……」 凄く可愛かったのにな……ぼそりと呟いた。 教団から抜け出して、散歩中。 パタパタ飛んでいる、金色の物体を見つけた。 何だろうと思い、近づけば 翼と尻尾がついてる球体で、体には十字が刻まれているモノ どうやら、ゴーレムらしい……。 かなり可愛い、ゴーレムは欠伸をしたのか牙が生えた大きな口が見えた。 『やばい…ストライク!』 捕まえようとして、手を伸ばした瞬間。 ぽっちゃりした猫がやってきて、ゴーレムをパクリと…… 「ティムキャンピー!」 遠くの方で、このゴーレムの名前を呼んでいる少年が居た。 この…と言っても、既に猫の口の中なのだが 「へー、あのゴーレムの名前…ティムって言うんだ」 「え…?」 ティムキャンピーを捜してやってきた少年に は、笑みを浮かべ声をかけた。 やってきた少年を近くで見ると、ティムに並んで可愛かった。 白髪に銀灰色の瞳、男性としては少しトーンの高い声。 「あの、貴方は…」 少年はに声をかけ、その場で足を止めた。 様子を見るためなのか、少年はをじーっと見つめ その場から動く事が無い。 呼びかけの答えを待っているのか、はたまたの 十字架の紋章が入った団服を気にしてなのか……。 動く様子のない少年に、はふっと 笑みを浮かべて、右手で左の方を指す。 「何…?」 少年は、指された方を見た。 そこは、誰も居ない裏路地。 見えるのは、猫の後姿ぐらいなもので……。 「金色の球体……あの猫の口の中」 「えっ!」 の一言に、アレンは頬から流汗した。 あきらかに妖しい人が、ティムキャンピーの行方を指す。 ティムキャンピーがいないと困る事は確か。 あやしい人を信じるか、それとも信じないか……。 少年が悩んでいる間に、猫は姿を消そうとしていた。 「あの、有難う御座います」 少年が心の中で決定したのは、信じるという選択だった。 お礼を言い、頭を下げて、今にも姿が見えなくなりそうな 猫の背中を追いかける。 遠くに離れた少年の背中を見つめながら、笑みを浮かべた。 ゴーレムを連れているという事は、エクソシスト。 もしくは、教団関係者だ。 しかし、教団に普段居るは彼の事を知らない。 という事は、教団関係者ではなく、新しいエクソシスト その可能性が高いという事だ。 仲間が増える、否、家族が増える。 「リナリーの世界が広がったな……」 ぼそりと呟いて、少年が去っていった方角の空を見た。 路地を抜けた先には、古ぼけた教会が見える。 「……頑張れ青少年、お前が“世界”となるならば」 また会うだろうな……。 は、もう一度だけ少年の去った方向を見つめ その場をあとにした。 白いシャム猫を見つけた。 とても可愛くて綺麗だ、けど…俺の嫌いなタイプの猫だった。 誰よりも優しそうで、イイ印象を持たせながら 誰よりも本性を見せていない。 白いシャム猫の、表情は嘘だらけ。 誰かに飼われる事なく、自分で生きていけれるコイツは おそらく、自分で生きていけれるが故に 本当の姿を見せないのではないかと……。 「犬、ウサギ、猫って…教団って動物園かよ」 教団に戻る途中で、ふと思い出す。 蕎麦ばかり食べてる犬っコロ。 テンションの高いウサギ。 そして、今回の白い猫だ。 思い出して、考えれば考えるほど特殊な動物園な気がしてくる。 リナリーだけが、唯一まともなのかと考えるが このワイワイガヤガヤした動物達を 己の世界と考えている時点で、まともではない気もする。 大変失礼な話だ。 いや、しかし、兄がアレならば仕方のない事だろうか その場で立ち尽くし、うーん、うーんと唸り続ける。 アイツ等が、動物ならばコムイは動物園の園長。 リナリーが、飼育員ってトコロか……。 「さしずめ俺は、動物見に来た子供ってトコロか」 声に出しながら、また歩き出す。 歩き出して3歩、4歩進んだ時だった。 無線ゴーレムから、声が聞こえてきた。 『…、聞こえる?』 「ん?どうした、リナリー…」 声の主は、リナリーだ。 いつもは、科学班やコムイからの連絡が多い中で リナリーの声が、無線ゴーレムから聞こえてくるのは珍しい。 『そこから少し離れた町に、探索部隊から連絡があって……』 話を聞くと、どうやらその町にAKUMAが出るかもしれないという。 探索部隊からの連絡からコムイが言い出した事らしい。 単なる憶測にすぎない為、まだエクソシストを派遣とまでは いかないが、近くにエクソシストが散歩してるなら話は別という。 「うわー…コムイの野郎、この前の事、根にもってやがる……」 ボソリと呟いた声は、無線ゴーレムを通じてリナリーの耳に入っていた。 クスクスと笑う声が聞こえてくる。 年上の人を野郎なんて言ってはいけません。 なんて、心の中で思いながらも…まぁ、コムイは別だ。 『気をつけて、』 「大丈夫だ、それよりコムイがサボらないように見張っとけよ」 笑い声は消えて、緊張した声に変わったリナリーに対して は、崩したままの話し方で言葉を伝え 無線ゴーレムの繋がりを切った。 前を向き、ゆっくりと歩き出す。 「千年伯爵、現れないかな……」 報復だか大福だか知らないが 俺の頭を絵にぶつけた事だけは、仕返ししなければ 気がすまない。 白いシャム猫くんも、こっちの町にやってくるだろうか? ふと思い出す、少年の顔。 銀灰色の瞳は好きだと感じた、額のペンタクルも含めてだ。 けど……。 「やっぱり、俺の嫌いなタイプだ」 本性を隠して過ごす、気まぐれな猫。 俺は、子供だから…。 思い通りにならない猫タイプが、苦手なのかもしれない。 |