魅惑のおみあし
二度目のグランプリファイナル。 勝生勇利は、ヴィクトル・ニキフォロフがコーチについたことにより、実力を発揮し見事優勝を勝ち取った。 表彰台に登った勇利の胸元にはメダル、右手には指輪、二つの金が輝いている。 取材もそこそこ、優勝した者よりもそのコーチの方が取材数が多いとは、おかしな話だろうか。 もう少ししたら取材も終わるだろうと思い、邪魔にならないように少し離れたところでヴィクトルを待っている。 少し離れていても取材の声はよく通るもので、復帰をするかどうかの話が聞こえてきた。 これでコーチは解消になるのだから、誰もが気になるところではあるだろう。 どうするのか勇利も気になっていたので、聞くのはちょうどよかった。 「そうだね」 肯定しているということは現役復帰なのだろうか。 これでまた憧れのヴィクトルのスケートが見られる。 離れてしまうのは寂しいし悲しいが、もともとロシアに帰すと決めていたことだ。 決めていたことだが、勇利はすっかり忘れていた。 ヴィクトルがびっくりさせなかった時はなかったことを。 「勇利がコーチについてくれたらね」 ウインクをしながらそんな事を言い出したヴィクトルに勇利は目を見開いた。 「……恐ろしいことを言ってくれるね」 結果、コーチになるのかならないのかは保留とされ、本格的な練習を始めるまでは日本にいることになった。 ヴィクトルにはヤコフコーチがいるだろうと説得を試みた。 しかし、傍にいてくれなきゃ困るなんて泣かれた日にはどうしようもなくなり、今現在に至る。 「ねぇ、勇利コーチ……マッサージしてくれるよね」 「そのコーチ言うのやめてもらっていいですか」 ヴィクトルの部屋のベッド上。 甚平からすらっと伸びたヴィクトルの足は勇利の目の前に出された。 勇利の足は練習のしすぎか、いまだに傷が目立つけれど、ヴィクトルの足はとても綺麗だ。 年も重ね、プログラム構成も難しくなってきているのにどうしてこんなに綺麗でいられるのか、マッサージをしながら不思議に思う。 「復帰しても今シーズンきりかな……」 「引退、するの?」 マッサージを終えて、ヴィクトルの足の甲にそっと口付ける。 ヴィクトルは妖艶な笑みを浮かべて、そのまま足を上げ勇利の顎下にかけた。 「見た目と中身は別だよ」 こんなに綺麗な足をしているのに、やはり中はボロボロに傷ついているのだろうか。 活躍は見ていたい、なんと言っても大ファンなのだ。 けれど、氷上を跳べなくなるほど身を潰してほしくはない。 「残念……」 勇利の言葉を聞き、ヴィクトルの足が顎下から下げられる。 「勇利コーチ、お守りちょうだい?」 下げられた足は勇利の顔に向かい、ぺちぺちと音を立て頬を叩いてくる。 「足癖悪いよ、ヴィクっ…」 頬を撫で始めた足は勇利の口元へと移動し、柔らかな唇を足の指で触れていく。 「んっ……ぁ」 口をこじ開け侵入してくる足の指。 やめさせようと足首に手をまわすが、力が入らず上手くいかない。 指が動くたびに部屋に響く音がする。 「んーっん」 閉じることができない口から唾液がこぼれ、勇利の顎とヴィクトルの足に伝わっていった。 ヴィクトルは足を口から抜き、唾液で濡れた状態のまま勇利の右手にこすりつける。 「指輪、濡れちゃったね」 「ヴィクトル、いい加減に……」 左手で口元を拭き、文句を言おうと立ち上がろうとしたが、その前に右手を引っ張られた。 体はヴィクトルの方へと傾き、覆いかぶさる形になる。 「わっ、何」 慌てて体を退かそうとしたがヴィクトルに腕を掴まれ動くことができない。 腕を掴んでいたヴィクトルの手はそのまま下に向かい、左手は右手に絡ませ指輪に触れ、右手は腰にあてられた。 「勇利は滑らない俺は嫌い?」 ぐっと引き寄せ、勇利の柔らかな唇を甘噛みする。 「ん…っ……」 甘噛みは口付けへとかわり、勇利の口から吐息が漏れ出した。 舌を絡ませ音を立て、勇利の頬が桃色に染まったところで唇が離される。 「っはぁ…はぁ……そいうこと言うの…好きじゃない」 勇利は息を整えながら言葉を放った。 「じゃあどういうのが好み?」 魅惑の足が勇利の太ももを撫でてくる。 勇利はその足を軽く叩いてヴィクトルの顔に近づき、頬に触れるだけの口付けをした。 「ヴィクトルはヴィクトルでいてくれればいい」 きっかけはスケートだったけれど、滑ってる姿だけを好きになったわけじゃない。 スケートをやめてしまってもこの気持ちは変わらない。 嫌いだなんて思いたくもないし、ヴィクトルの口からその言葉が出てくるのもいやだ。 ヴィクトルは瞬きを数回したあと、淡く笑みを浮かべた。 「下のおくちは金メダルとったらね」 勇利に足を絡ませて、ヴィクトルはそのまま寝始めてしまう。 寝顔を見て小さくため息を吐き、寝てしまったヴィクトルの頬を撫でて勇利も横になった。 「……大会まで遠いなぁ」 |