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それでも好き
嫌だと言うのに、近づいてきて やめろと言うのに、じっと見つめてくる。 ロイはエドワードの目の前に立ち、その場から動くことをしない。 耐えられなくなったエドワードは、小声で話を始めた。 もう、ここまで追い詰められてしまったら ここで何かを話して、どうなってしまってもいいと思ってしまった。 「特別になりたい」 「君は、充分特別なんだがね」 あぁ…夢と同じ会話。 「大勢の中の一人じゃなくて、あんたの特別になりたいんだ」 どうしよう?夢と同じなら… ロイは、時間だとか言って去って行くんだろうか 「特別だと言っている」 「違うッ、だったら何で女の所なんかにっ」 顔を隠す事も忘れて、エドワードはバッと顔を上げ 涙を流した痕を残したまま、ロイを睨んだ。 女性の香水の匂いつけて帰ってくんな ワガママだって分かってる 「あんたなんか嫌いだ」 根本的に女性の元に行くな あぁ、俺は我慢できない子供だよ 「来る日も来る日も、女・女・女…ちょっと時間があれば 仕事にデートに……いい加減にしてくれよ」 無茶や無理してばかり なのに笑って、資料や文献を集めてきて 「いい加減に……」 ロイはただ、俺の話を黙って聞いている。 目の前に立って、ただただ黙って 「優しくすんなよ…」 小さく呟いた言葉を最後に、俺は黙り込んでしまった。 もう言える言葉がない、言いたくても… ロイの沈黙が怖くて言えない。 少しだけ時間が経ち、ロイが重い口を開けた。 「大人というものは、子供の頃に比べて卑怯になっていくものだ 世の中は等価交換と言うが、大人の世界は理不尽な事が多すぎる」 ロイは言いながら、持っていた自分の皺のよったコートを エドの頭にバサッとかけた。 「そんな大人の世界で、大切なのは言葉なんだがね 生憎、その言葉ですら嘘という仮面で隠すモノもいる」 頭からかけられたコートを退かす事なく エドワードはコートの袖口をぎゅっと掴んだ。 「で、キミは…仮面で隠すのかね?」 「俺、は……」 『あんたなんか嫌いだ』 「それとも、アレが本心なのか……」 小さく呟いたロイの言葉が、頭から離れない。 本心なのか?馬鹿を言うな、本心だったらな… 本心だったら、あんたを想って泣くものか コートの袖口をぎゅっと掴んだまま、エドワードは ロイに向かってコートを投げた。 「あんたなんか…女ばかり、仕事はしないし したと思えば、無茶や無理ばかりして…… 雨の日は傘持ってくるし、俺を見る表情だけ違うし 夢ですら傍にいれない…そんな奴を」 一気に話し、息継ぎのために途中で止まる。 それから、少しだけ間を空けて…俺は小さく呟いた 「嫌いになれたら…どれだけよかった事か……」 エドワードの言葉に、ロイはそっとこちらに手を伸ばしてきた。 投げられた皺くちゃのコートは床の上。 ロイがエドワードの腕を掴む。 「好き」 エドワードの小さい一言と同時に ロイはぐっと腕を引っ張り、抱き寄せた。 |