声にならないほどに愛しい
あれから数週間という時間が過ぎ。 何が変わったかと言うと、何も変わっていない気がする。 相変わらず、女性の元に出掛けるロイと 旅をしている俺とアル。 ただ、ちょっと珍しいモノを見た。 旅に出ていた場所の物事に1つ、区切りが付いたので 報告書提出もかねて、イーストシティに戻ってきた時の事。 「あっ……」 なんて小さな声が、上の方から聞こえてきた。 発したのは、エドワードよりも身長の高いアルフォンス。 身長が高いのだから、上から聞こえてくるのも当たり前だろうが…。 アルフォンスの視線は、遠くに居る2人の姿を捉えていた。 ロイ・マスタングと、見知らぬ女性。 「兄さんッ……」 それに気付いたエドワードが、その様子をじっと見つめているのを 見たアルフォンスは、肩をそっと叩き その場を去ろうと、話をするがエドワードはそれに応じなかった。 ただ、じっとじっと見つめ続け長いようで短い時間が経った。 すると遠くに居るはずなのに、ハッキリと耳に入ってきた音があった。 その音に、エドワードが驚いて、そして去ろうと話をしていたアルフォンスも また驚き、声が出なくなっていた。 女性が走ってその場を去り、ロイが帰ろうとしてエドワードに気付く。 ゆっくりと足を進めて、目の前にやってきた。 エドワードは、慌てて俯き顔を見ないようにする。 「お久しぶりです、大佐」 その代わりに、アルフォンスがロイに対して挨拶をした。 ロイは、苦笑いしながらアルフォンスの肩を叩き そして、俯き言葉を発しないエドワードの頭をそっと撫でた。 「その姿を見ると、まだのようだね」 どうやら、あの赤い石の話をしているらしい……。 ロイとアルフォンスが話をし続ける中。 どうしても、エドワードは顔を上げることができずにいた。 相変わらず、女性の元に出掛けていた事実に ちょっとだけショックを受けているのと。 ちょっとした珍しいモノを見た事に 見てしまって申し訳ないような気がして……。 「で、どうしたんですか、さっきの音は」 そう言いながら、アルフォンスはロイの頬を指差した。 差された頬は、少し赤く染まっていて、アルフォンスの一言に ロイは苦笑いしたまま、片手を頬に添えて小さな声で答えた。 「本命が出来たと言ったら、こういう事になってね……」 見られていたようで、恥ずかしいかぎりだと……そう言った。 ロイの言葉を聞いてから、頭で整理して理解するまで 少し、現実と時間差がついた。 時間にして数秒だが、ロイの言葉に遅れて 「え…?」 と、エドワードの声がその場に響いたのだ。 顔を上げると、ロイの頬がよく見えた。 痛そうに少し赤く染まっている頬を見て、エドワードは声が出せなくなった。 どうしよう……。 元々、俺から好きな状態なんだけど でも……。 「どうした?エドワード……」 顔を上げたのに、言葉一つ発しない事に疑問を感じたのか そっと顔を近づけて、覗き込んできた。 それにビックリして、余計に声が出なくなり。 だんだんと顔が熱くなっていく。 その様子を、ロイは小さく笑いながら、アルフォンスは呆れた顔で見ていた。 女性に人気で、好かれていて そんなロイは女性には優しくて……。 だから、まさか女性に叩かれてる姿を見るなんて しかも、本命が出来たなんて言う。 「その本命って言葉に揺らいでるんじゃないですか?」 呆れた顔をしながら、アルフォンスがロイに対して言った。 ロイは、なるほどという顔をしながら、エドワードを見つめ そっと片手を伸ばし、エドワードの頬に触れる。 ちょっと待ってくれ。 揺らいでません。 これっぽっちも揺らいでないッ。 だって、分かってるって……自惚れるわけじゃないけど でも、ついこの間告白したばかりで… だから、次に出てくるロイの言葉が もの凄く恥ずかしいって事は分かるんだって 「もちろん、本命はキミだよ…エドワード」 その一言に、もう声なんて出るわけがなかった。 |