ふりむいて抱きしめて
「じゃあ、行ってくるよ…夕食には間に合うように帰るから」 朝が弱いロイは、ぼーっとしながらも 軍服に着替え、リビングのソファーに座っている エドワードを見つめ声を出した。 「あ…うん」 小さな声を出したエドワードもロイと共にぼーっとしている。 先程まで居たベッドの中とは違い、リビングは寒い。 少し振るえながら、毛布をマントのようにくるっと身体に巻きつけて 司令部に出かけようとしているロイをちらちらと見ていた。 女性の所で朝を迎える事が多かったロイが 1日中、傍にいてくれるとは思っていなかったのが正直なトコロ。 だけれど、ちゃんと目の前に居る。 今、ちょっと手を伸ばせば触れれる位置にいるのだ。 「鋼の?」 いつも騒いでいるのに、今日は大人しくしている。 いや、大人しくしているというよりは、何かぼーっとしている。 そんなエドワードの様子を疑問に思ったのか ロイは足を進め、小さく丸まって座っているエドワードの 傍まで近づき、顔をそっと覗き込んだ。 「寒いのか……」 エドワードが身体に巻きつけている毛布を見て ロイは言葉をかけ、エドワードの頭を撫で 髪を軽く、くしゃくしゃとした。 「寒いなら、温かい飲み物でも飲んで、ベッドに行きなさい 風邪を引いたら……アルフォンスが悲しむだろう?」 この言葉に、エドワードがふっと顔を上げてロイを見る。 「アンタは?」 「ん…?」 「いや、なんでもない……」 が、一言二言話して、すぐに黙り込む。 この後、いつもならロイは大きな溜息を吐いている。 それが聞きたくなくて、毛布に顔を埋めた。 何で、アルの事はちゃんと呼ぶのに 俺は『鋼の』って呼ぶんだろう。 家にいる時ぐらい、名前で呼んでくれてもいいじゃないか 風邪を引いたら、アルは確かに悲しむけど でも、アンタはどうなんだよ……。 面倒臭いと思うのかな。 ガキなんて相手にしてられないかな。 顔を埋めた事で、視界は真っ暗。 暗闇で、考える事はズキズキと心が痛む事ばかり。 少しだけ時間が経ったが、いつも聞こえてくる溜息が エドワードの耳に入ってくる事はなかった。 その代わり、ロイの一言がすっと耳に入ってきた。 「昼には帰る」 その一言に、慌てて顔を上げる。 顔を上げた時には、玄関の扉が開く音が聞こえ ロイはさっさと出て行ってしまった。 ついさっきまで、夕食には間に合うようにと言っていた。 昼に帰れるわけがない。 仕事は溜まってるし、会議だってあるだろうし でも・・・… でも…… 昼に帰るって… バンッと玄関の扉を開ける。 少し離れた所に、アイツの背中が見える。 離れてる所為か、アイツは俺が出てきた事に気付かない。 靴なんて履いていられない 毛布にくるまったまま、エドワードはその場から駆け出した。 |