晴れますように


日差しが少し眩しい中、イーノックはぼーっと縁側に座っていた。
そよ風が頬を撫で、葉を揺らす音が耳に入ってくる。
風により雲が流れて太陽が見え隠れ。とてもいい天気だ。
こんな日はビニールシートを持って、お弁当を作ってピクニックに行くといい。
でも、幼いイーノックには何も出来ないし一人では寂しいから家に居る。
ごろんと転がり縁側から出した足をぶらぶらとさせた。
車の走る音さえしない昼下がり。暇すぎてとりあえず転がる。
畳の匂いが部屋からしてくる度、お茶が欲しいなんて思いながら
しかし、その場でごろごろ転がるだけで動きはしなかった。
上を見上げると天井が高く、手を伸ばすとぶら下がっている電球に届きそう。
伸ばしてもっと伸ばしたところで手に冷たい物が当たった。
「ルシフェル?」
イーノックの手に当たったのは、手のサイズにあった小さなペットボトル。
「お茶、和菓子そこ」
冷たいお茶を手渡し、ルシフェルはイーノックの隣に座った。
小さな足と大きな足が縁側から出されぶらぶら。
ごくごくと音を立てて勢いよくお茶を飲んだイーノックは、満面の笑みを湛える。
ペットボトルにふたをして、和菓子を取ろうと寝転んだまま手を伸ばした。
「行儀悪いぞ?」
そう言ったルシフェルも同じく寝転んだままで、和菓子を取りイーノックに手渡しする。
「ありがと……」
自分の手のひらよりも大きい煎餅を小さな口で噛み付いて、バリッと音を立て割る。
少しずつしか食べれないが、それでもイーノックはとても満足そうにしていた。
ずっと、煎餅が割れて食べられる音がしていたが、数分後には音がしなくなる。
イーノックは、食べる事にすら体力を使ったようで息を大きく吸っては吐いていた。
その様子を見て笑い出すルシフェルは、イーノックの持っていた食べかけの煎餅を取り上げる。
「あ!」
取られたと思ったイーノックは必死に手を伸ばして奪い返そうとするが
その前に、ルシフェルは煎餅を手で割って小さくした。
小さくした煎餅の欠片をイーノックに渡し、これなら疲れないだろうという。
欠片を受け取ったイーノックは、はにかんで頬を赤らめた。

あっという間に時間は過ぎて夕方。周りの景色はオレンジ色へと変化し
暖かかった気温が下がっていく、風が少し強くなりカーテンが音を立てて揺れた。
「イーノック……」
「んー……んー」
「部屋、戻ろう?」
ぼーっとしたり、転がっていたりしていたイーノックの横でルシフェルは立ち上がった。
すっと伸ばされる大きな手。そっとその手に触れるとぎゅっと掴まれ勢いよく引っ張られる。
手が痛まないように、腰に手を当てて体ごと引っ張ってくれたようだ。
引っ張られ立ち上がったイーノックは、ルシフェルのジーンズを掴み歩き出した。
「ルシフェル……今度は、ピクニック行きたい」
見上げて言葉を放つイーノック。ルシフェルは頭を撫でた後、背中をぽんぽんと軽く叩いた。
「そうだな、明日……晴れたら行こうか」
「うん、ルシフェルと一緒!」
晴れたら行こうと言われ、イーノックは幸せそうにしながら廊下を走り出す。
部屋に戻ると、すぐに机に向かい照る照る坊主を作り始めた。
「明日晴れますように」
パンパンと手を合わせて願い事。