紅色


色を重ねて白色に戻す、何事にも素直で純粋で
どんなに違う色を重ねて汚しても、気づくと白に戻っている。
手に入れたいと思った。白ではない色に重ねて塗って、二度と白に戻らぬよう。


そっと抱きしめて首筋に口付けた。
くすぐったいと笑っていたイーノックは少し痛みを感じて体が動く。
「っ……ルシフェル何を」
酷い痛みではない、一瞬痺れたような感覚がイーノックを襲う。
首に何をしたのかを聞いてもルシフェルは答えず、顔を埋めたまま。
ルシフェルの吐息がかかりイーノックは急に恥ずかしくなった。
「その、離れてくれないか?」
肩を押そうとしたが、その前に腕を掴まれた。ここにきてもルシフェルは無言だ。
いつもならば、いい匂いだとか言いながらすぐ離れてくれるのに
今日はどうしてしまったのだろう、体調でも悪いのだろうか。
様子がおかしいのが不安になり、イーノックは腕を掴まれても抵抗はしなかった。

顔を埋めていたルシフェルの舌が首筋を撫でる。
「ルシ……っ」
舐められた感覚が全身を震わせ、ルシフェルの唾液が首筋を通り肩に落ちた。
慌てて離れようとしたが、片腕は掴まれていて、もう片方の腕は体ごと抱きしめられ動く事ができない。
一瞬でも震えたのが伝わったのか、ルシフェルはイーノックの耳元まで口をもっていき
イーノックの耳を甘噛みし息を吹きかけて囁いた。
「堕ちろ」


「ん、ぁ……」
体が震え勝手に動く。ルシフェルの吐息が口から体の中に入り、舌が絡み合った。
わざと音を立てている事に気づいたのは何度も口付けられた後。
その音が聴覚を刺激し、している事をハッキリと分からせてくれる。
呼吸の仕方が分からない。息が出来ない、胸も苦しい。
今どうしてこうなっているのか分からないまま、ルシフェルの舌を受け入れた。
「抵抗しないのか……?」
何を、と問う前にルシフェルの手がイーノックの鎖骨に触れる。
冷たい手に驚きまた体が動く。
「な、に……やめっ」
「もう遅い」
ルシフェルの手が衣服を乱し、あらわになった胸の突起に触れた。
「っ…はぁ……」
天井がぼやけて見える。少し下を向けば突起を舌で転がしているルシフェルの髪が見えた。
もう両腕は掴まれていない、押せば解放されるというのに力が抜けて上手く体が動かない。
足が震えだし立っているのがやっととなる。
それに気づいたルシフェルの片手が、イーノックの腰に触れて体を支えた。
片手が体を支え、もう片方の手が太ももを撫でる。
ルシフェルの手や舌の動きに全身が反応するようにビクリと動き
なんと浅ましい体だと心で嘆いた。
突起から唇まで、何度も何度も口付けられ擦り減ってしまうのではと怖くなる。
口付け舌が絡み合ったところで、ルシフェルの手が太ももから秘部に向かう。
それに気づいたイーノックは咄嗟にルシフェルの舌を噛んだ。
「っ……」
「す、すまない……だが」
体が離れる。ルシフェルは片手で口元を押さえた後、何も言うことはなかった。
イーノックは改めて自分がされようとしていた事を察して、顔を赤く染める。
沈黙が続く。離れてからルシフェルは何も話さず動く事もしない。
耐え切れなくなったイーノックは、その場を去った。

急ごうとしているイーノックの足音だけが廊下に響く。
ルシフェル以外誰も居なくなった通路。少し遠くに天使たちが遊んでいる様子が見える。
もう少し派手に音を立てた方がよかっただろうか、噛まれた舌で己の指を舐めた。
「まずは、紅色……」
首筋に落とした跡を思い出し、ルシフェルは小さく笑った。