クナイの向く先
※佐助が敵だったら…というパロ。
誰もがきっと、ここは叫んで兵士を呼ぶべきだと思うだろう。 幸村自身、そう判断するのが本当は正しいと思っている。 けれど、声が出る事はない。 どこでどう間違えたのか… 幸村は必死に考えを巡らせるけれど…。 その考えが、全て正しい場所にいきつく事ができないでいた。 目の前には佐助が立っている。 クナイを持って、そのクナイを幸村に向けて… 何かの冗談だろう、一瞬考えたが 佐助が、こんな冗談をするとは思えないし 何より、冗談で仕えるモノに刃を向ける事はしないだろう。 「ゴメンネ…」 静かな部屋に佐助の小さな声が流れた。 ゴメン、それは何を意味するのか……。 そんな事、考えなくともこの戦国時代、経験からして もう幸村は気付いている。 佐助は味方ではない。 佐助は敵だ。 敵…幸村の中で、武田に反するモノは敵だ。 しかし、クナイを持ち出されても…… 刃を己に向けられても…… どうしても、佐助だけは敵だと思いたくなかった。 思いたくないのではない、思えないのだ。 心の底から信頼し、幼き頃から誰よりも傍にいて そして、何より好きな相手…。 お館様が天下統一をするまでは死ねぬ そう考えていた事も、佐助を目の前に 一瞬揺らぎ始めていた。 「佐助は…某が殺せるのか……」 静かに問いかける。 殺そうとしてる人間に対して 殺せるのかなどという問いは、無意味に等しい。 それが、忍びならなおさら…… 「さぁ……忍びに感情はいらないからね」 幸村の問いに対して、言葉を繋げた佐助の表情は 部屋が暗くてよく見えない。 ただ幸村が言える事は、佐助の声がいつもと違って 震えていた事だけ。 「そうか……某はまだ死ねぬ…」 が、佐助……お主に殺されるなら それもいいかもしれぬ……。 |