[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。


ぬくい


「旦那~……何やってんのさ……」

仕事から帰ってきた佐助が、1番最初に声を出した言葉はコレ。
主である幸村が、縁側の床にへばりついてるのだ。
ぼーっとしてる幸村の顔を見て、仕事の疲れはどこかに吹き飛んだが
変わりに何か別のモノがのしかかる気分である。

「何とは何だ?」
「……床に頬付けてるその状況だよ」

右側の頬をべったり床にくっつけた状態で
幸村はじーっと佐助を見つめてくる。
どうやら、床から頬を離す気はないらしい…。
その様子を見て、佐助は2度目の溜息を吐きながら
幸村の横に座り胡坐を組んだ。
幸村は、頬を床に付けて視線を庭に向けたまま
手探りで、佐助の服を掴む。

「ぬくい……」

佐助の表情は既に呆れ顔。
床を触れば少しだけ温かかった…。
だから、頬を付けたまま離さないんだろうけれども…。
では、佐助の服を掴んだら温かいかと言われれば
そんな事はない、身体ならまだしもただの服だ……。
しかし幸村は、掴んでから幸せそうに笑う。


「んー、やっぱりこっちの方がいいぞ」

しばらくしてから、そんな言葉が幸村の口から放たれる。
佐助の服を掴んだまま、もぞもぞと動き出し
何かと見ていれば、少しだけ床から頬を離し起き上がった。
と、思っていたが…起き上がっただけではなく
幸村は、もぞもぞと佐助の胡坐を組んだど真ん中に頭を乗せて
パッと掴んでいた服を離し、かわりに佐助の手首をぎゅっと掴んだ。

「旦那……あんたは、子供ですか……」

佐助は微笑しながら、自分の胡坐の中に入ってきた
幸村の顔をそっと覗き込む。
幸村は、少しだけムッとした顔をして

「子供ではないわ」

言いながら、覗き込んできた佐助の首にそっと口付けて
すっと胡坐の中で不貞寝を始める。
突然された事に、佐助は目を見開いて驚き
少しの間だけ、固まって動けなくなっていた。

幸村に言わせれば、少し触れるだけでもキスは破廉恥であって
いつも顔を林檎のように真っ赤にさせて騒ぐのに
珍しい事もあるものだと、佐助は小さく笑い出す。
子供だったら破廉恥な事はしない
だから、某は子供ではないなんて言いたいのだろう。

「不貞腐れない、不貞腐れない……子供じゃないんだろ?旦那」

不貞寝を始めた幸村の髪を梳きながら
佐助はそっと頬に口付けた。