声と手紙


ふっと目覚め、天井を見る。
少しぼんやり見える視界、片手で擦りながら、ゆっくりと改めて目を開けた。

「おはよ、旦那」

右側から、囁くような声が聞こえた。
佐助の声だ。
幸村は、朝一番に佐助の声を聞けた事が嬉しくて
少し、胸の辺りがムズムズした。

「まだ、眠いな…」
「珍しい、いつも朝一番に修業だって言ってる旦那が」

一番聞きたかった声を、幸村は起きてすぐに聞けたわけで…。
そうすると、修業をせねばという思いより、
心地よくてまだ寝れるという思いのが強く働く。

「まぁ、たまには旦那も休まないとだしね…昼までならいいよ?」

佐助は小さく笑いながら、横になっている幸村の頭を撫でた。
また、少し胸の辺りがムズムズした。
なんだろう、このムズムズした気持ちは…。

考えて、考えるけど、難しすぎてよく分からない。
幸村は考えながら静かに目を閉じた。


ガバッと音を立て起き上がる。
外を見ると、オレンジ色に染まる景色が見えた。
既にお昼は過ぎている。

「佐助ーッ、何故起こさなかった」

近くにいるだろう佐助に対して、大声をあげる。
しかし、いつもなら聞こえてくるはずの声が聞こえない…。
どういう事だと、周りを見渡せば、近くにお皿と紙が置いてあった。

お皿の上には、団子。
紙には、丁寧な字で佐助が書いた文が載っていた。

『任務…喉に詰まらせないように。』

「佐助め…」

任務のため、この地を離れて、
もしかしたら命が危なくなる事もあるかもしれぬのに
心配事は、幸村が団子で喉を詰まらせないかという事。

「某は、そこまで幼くないわ…」

口では、文句を言いつつ
幸村は、佐助が残した手紙を、皺にならぬようそっと胸に抱き締めた。