ここに立つ
目の前に広がる血の海を見つめ、その場に立っている。 その中で、武田軍の勝利だー!と兵士達は喜び声をあげていた。 「旦那…」 ふっと声が聞こえて、振り替える。 「佐助……」 目の前には、佐助が苦笑しながら立っていた。 「何、酷い顔してんのさ…旦那は、よく頑張ったのに」 そんなに酷い顔をしているのだろうか……。 佐助の言葉に、幸村は消え去りそうな淡い笑みを浮かべた。 「何を頑張ったと言うのだ…」 ぼそりと呟いた一言を聞き、佐助はそっと幸村に近づいた。 その様子を見ながら思う。 本当に、何を頑張ったのだろう。 戦に向かう事を頑張ったのだろうか… いや、戦など当たり前の生活。 当たり前な事を、頑張るとは言わない。 では、戦に勝った事? いや、勝つ事は当たり前ではないが でも頑張る事とは別なモノに感じる。 ならば、人を…殺した事を頑張ったというのだろうか? この血の海を作った事が、頑張ったと…… 「旦那…泣いて……」 「佐助?」 近づいてきた佐助は、幸村をそっと抱き締め囁いた。 「…泣いて?」 佐助は耳元で、小さく囁き続ける。 泣いてほしい…無理に笑うなと……。 「頑張ったよ…旦那は、頑張ったじゃないか……」 「だから、何をッ」 頑張ったのだ、と幸村が最後まで言葉を言う前に 佐助は、抱き締めている力を強めた…。 「ここに立ってる事…」 佐助が言葉を放つ。 幸村は、その言葉を繰り返し繰り返し佐助の口から聞いた。 「佐助…もう一度……」 「ここに立ってる事が、頑張ったって…」 「すまぬ、もう一度…」 「…生きていてくれて、よかった…旦那……」 幸村の手から、二槍が落ちて頬に涙が伝った。 |